*5話*






「大丈夫?」



うずくまったままのルークに声をかけるカロル。

その口調からは本気で心配していることが感じ取れた。

うつむいていた顔が上げられる。

浮かんでいた表情は眉尻が下がった情けない笑顔だったが、どこか引きつっているようにも

見えた。



「どこか悪い所があるなら言ってください。怪我とかだったら治せますから」



カロルについてきたのだろうエステルが、気遣わしげにルークの傍らにしゃがみこんだ。

その心配そうな表情に嘘は見受けられず、ルークは感謝の気持ちと共に苦笑いを浮かべた。



「大丈夫。ごめん、迷惑かけてるな」



犬耳がついていたらしょぼんとたれていそうな表情。

自分の与り知らぬ所で起きた突然の出来事。

愚痴をこぼしたくなっても仕方のないような状況だが、それは密航された方も同じだろう。

むしろ厄介ごとを持ち込まれた形になるのだから、こちらが思っている以上に負担が掛かっ

ているのだろう。

その事実がルークを落ち込ませる。



「大丈夫そうには見えないけど・・・」



大丈夫というには赤みの欠けたルークの顔色にカロルは眉を寄せた。

不審者である自分に対しても気遣いの心を見せるこの少年は、とても優しい人間なのだろう。

自分の態度が心配させている原因だとは分かっていたが、今の現状では大丈夫である事を装

うしかできない。

今の所体調は安定している。

鏡の前に立っていた時のような乖離を示す症状は現われていない。

ただ、思考がどんどん沈んでいってしまうだけ。

それでもこれ以上迷惑をかけないように、ことさら明るさを装う。



「本当に大丈夫だって、心配してくれてありがとうな」



そういってルークは笑い、カロルの頭を優しく撫でた。

その表情はとても大丈夫とはいえないものだったが、向けられた二人はそれを追求する事は

しなかった。



「おーい、そこの二人。そろそろ降りるから準備しとけよ〜」



その場におちかけていたなんともいえない空気を破るようにユーリの声が聞こえてきた。



「あ、僕武器部屋に置いてきたままだった!」

「何やってんのよガキんちょ」

「素手で行こうとするとはさすが先生」

「若いうちに冒険するのはいいけど、さすがにそれは無謀すぎると思うわよ」



間の抜けたカロルの言葉にすかさずそこかしこからツッコミが入る。

からかうような言葉の中に温かな響きが混じっている。

心で繋がっている親しいものたちなのだろう。

ユーリ達を見ていると自分の仲間を思い出す。

厳しい事も言うけどレプリカである自分を人として見てくれる者達。

わかれてからそんなに時間が経っていないのに仲間に会いたくなった。

今の状態ではいつ再会できるか分かったものではないが、とても会いたくて無性に焦がれた。

そんな事を思ってルークの目が少し潤み掛けた時、



「あんたも降りるんだから準備しておけよ」

「へ?」



ついでだとばかりに付け加えられたユーリの言葉に、ルークは間の抜けた声を返した。















『準備って、俺何にも持ってないんだけど・・・・・』

『バーカ、心の準備って意味だよ』

『あ、そっち・・・・』

















絶賛ネガティブ中のルーク。
書いててカロル先生に和んだのは秘密です・・・・・
ヴェスペリアのメンバーって和気藹々としてていいですよね。
アビスメンバーもそういう所が無いわけではないんだけど少し硬い気がします。
集まっている時の状況が状況で最初が最初だから仕方ないっちゃ仕方ないんですけどね。
次の話で少しはルークの状況が変わるといいな・・・・・・

もう1つの方に対して、こっちは気が向いたときに書くので、亀を通り越してナメクジ
更新になると思われますが、それでもいいという方は、気長にお待ちください。



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