*4話*






諭すように言われてもに返せる言葉がないルークは返事を返さずに黙り込む。

自分が置かれている状況の理不尽さに泣きたくなる。

けれども彼らの考えが理解できないわけではなかった。

自分の意思で来たわけではないが、知らない人間がいつの間にか船に乗り込んでいたの

だ、誰でも警戒するのが当たり前だろう。

普通に考えれば納得される話じゃない。

一体俺がなにしたっていうんだよ・・・・・・・・・いや、まあ完全に人から仕返しされないほ

ど完全潔白でもないか・・・・・

けれどもこんな意味不明な状況に陥らされる様な事をした覚えはない。

自分がタタル渓谷に飛ばされた時も似たような状況ではあったが、その時は飛ばされる

にたる現象が直前に起きていたし、ルークが飛ばされた現象の情報を把握している者も

いた。

目の前にいるのが軍人であったならば、その手の情報は入手しているだろうが、この船

に乗っている人間の服装ややり取りを見ているに、どうやったって軍属には見えない。

つまりは民間人の船に突然飛んでしまったというわけだ。

(何故魔物に船を銜えられているのかとか、何故何故こんな辺境の地を飛んでいるのか

とか、どういう関係の集団なんだとか、民間人と呼んでいいのか首をひねりたくなる者

達ではあるが、軍属には見えないから一応民間人であっているのだろう)

軍部で把握されるような情報を一民間人が把握できるとは思えない。

どうやったって相手を納得されられるような説明が出来そうにないルークは、もうどう

にでもなれと思いながら大きなため息を一つついた。



その頃にはルークの返事を待つために横にいたカロルも、一体向こうでどういう会話が

なされたのか、始まってしまったレイヴンとリタの追いかけっこを止めるためにどたば

たと騒がしい甲板の中心に向かって駆け出していた。























「で?本当の事話す気にはなったのか?」



半分諦めたような顔をして目の前で騒いでいる集団を見つめているルークに、ユーリが

声をかけてきた。

こちらが落ち着くのを待っていたようで、ルークの気が緩んだ瞬間に声をかけてきた所

から見てもそれは確かだろう。

表面上は穏やかさを保っているが、目の奥にはまだ疑いの色が残っていた。

ルークはため息をひとつついた。



「だから俺は嘘ついてねえってば。ついでに言えばあんたのいうお貴族様とやらみたい

に答えをはぐらかせている訳でもねえよ」

「・・・・・・・・・・・・」

「俺は馬鹿で愚かだけど自分が置かれている状況が分からないわけでもないし、嘘をつ

いていい時と悪い時くらいは分かるつもりだ。隠し事される方の気持ちや騙された方の

気持ちも分かるしな」



そういってルークは少し遠くを見るような目をした。

そんなルークの顔を何かを確かめるようにじっと見つめ、



「・・・・・嘘は無そうだな」





と、ユーリは小さくつぶやいた。

その双眸の中に宿る疑いの色が少し緩んだことに気付かないまま、ルークはため息を吐

いた。



「言ってもあんたは信じないんだろうけど、本当にさっきまで自分の部屋にいたんだ。

部屋の外で仲間が待っていて、式典のために俺は正装に着替えてて、吹き込んできた花

びらをつかもうとして・・っ・・・・・・・・」



そこで急にルークの言葉が詰まった。

両手を隠そうとするように抱え込んで何かとても辛そうに、思い出してはいけないこと

を思い出してしまったかのようなそんな表情を浮かべて。

急に変わったその変化にユーリは眉を寄せた。

うつむかれてしまったのではっきりとは分からないが、顔が少し青ざめているように見

えた。

かすかにだが体が震えている。



「?」



今の会話のどこにそんな反応を示す要素があったのか分からずにユーリは首をかしげた。

その時、頭上からバウルの鳴く笛のような音が聞こえた。

何かを知らせるようなそれに、ユーリは空を見上げた。

騒いでいるカロルたちを微笑みながら見つめていたジュディスもユーリと同じように頭

上に視線をやった。



「そう、分かったわ」



何かバウルとやり取りがあったらしく、頷いたり何かをつぶやいていたりしている言葉

に気付いてカロルが足を止めジュディスに問いかける。



「どうしたの?何かあった?」



心配そうに眉を寄せて見上げてくるカロルに、ジュディスはバウルと会話する為に当て

ていた手を下ろして首を振るとにっこりと微笑んだ。



「もうすぐ目的地に着くそうよ」



ジュディスはそう告げると、ユーリに視線をやった。



「彼、どうするの?」



言いながら視線でルークを指したジュディスにユーリは肩をすくめた。

分かりきっている事を聞くなといった表情だ。

ジュディスの視線を追うようにユーリの方を向いたカロルは、未だ密航の疑惑がはれな

い赤毛の青年が腕を抱えるようにしてうずくまっている事に気付いた。

遠目から見ても具合が悪そうにも見える。

とりあえずエステルを呼びに行く為に未だに騒いでいる仲間たちの元に向かった。

それを横目で見ながらも二人の会話は続く。



「どうするって、連れて行くしかねえだろ。船ん中においていくわけにもいかねえしな」



危険だとしても信用の出来ない人間を残すという選択肢は最初からない。

危険のない場所に置いて行くという選択肢も目的地まで来てしまったので却下というこ

とになる。



「ったく、面倒が増えたじゃねえか」



ルークを連れて行くことで生じる面倒にユーリはぼやいた。

今回の依頼は僻地にしかいない特殊な魔物の素材を取ってくるといった物だった。

戦闘慣れしている仲間達だけなら割と簡単な部類に入る依頼だが、そこに武器も持って

いない服装からかんがみるに貴族であることは確実なこの密航者の青年が加わるとなる

と話は違ってくる。

貴族が魔物と戦闘などという危険を冒す事はないだろうから戦力として数えるどころか

完全な足手まとい。

かといって船に置いていくことは出来ないのだから彼の身を守る人員を割かなければい

けない。

そのまま僻地に放置した方が後腐れもなくていいのだろうが、それは義に反するので却下。

簡単だったはずの依頼は一気に難易度を増すことになった。

ユーリはこみ上げて来るため息を抑えることなくついて空を見上げた。

















四面楚歌の状態変わらず。ユーリの態度が少し軟化しました。
状況は全く変わってないですけどね・・・・・・・
ルークのことユーリ達は色々言ったり(思ったり?)していますが、ルークが戦えることを知らない
からの発言であって、実力を知ったら少しは考え方が変わると思います。
上手く展開させないと警戒度UPな事態になりかねませんがね。
今のルークは丸腰だからそんな事態にはなってないのが救いです。
普通の貴族ってのは護衛とかつけて一番安全なところにいそうなイメージがあります。
自分で書いといてですけど、ユーリが冷たい!!
いい加減関係をどうにかしたいんですけど、当分こんな感じな気がしてます。

もう1つの方に対して、こっちは気が向いたときに書くので、亀を通り越してナメクジ
更新になると思われますが、それでもいいという方は、気長にお待ちください。



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