*6話*
フィエルティア号が降り立ったのは断崖絶壁が続く台地の上だった。
端まで行って下をのぞき込めば、いろんな意味で天国が見れそうだ。
「おーい、お前等あんまりはじっこ行くなよ〜。落ちても助けらんねえからな」
地面に降り立つなりワイワイはしゃいでいるメンツにユーリは、ため息混じりの声を上げた。
「ここって・・・・・・」
世界を旅して色々なところを見てきたつもりのルークだったが、目の前に広がる光景は今まで
見たことのないものだった。
似たような所をあげるとしたらシェリダンの近くにあるセフィロトの近辺なのだろうが、あそ
こはここまで大きな大地ではなかったはずだ。
まだまだ世界は広いと、ルークが思わず感嘆のため息をついたときだった。
「おーい、そこのお貴族様」
ルークがぼんやりしている内にほかのメンバーは落ち着いていたのか、少し離れたところにい
た。
フィエルティア号の近くに突っ立っていたのはルーク一人だけ。
「って、そのお貴族様って呼び方やめてくれよ」
あわてて駆け寄りながら、気になった点を指摘する。
「仕方ねえだろ。ほかの呼び方知らねえんだし」
「そういえば名前聞いていませんでしたね」
「自己紹介もまだだったよね」
あっさりと返してきたユーリにはじめてお互いの名前を知らないことに気付いたメンバー。
最初の状況が状況で混乱の真っ直中だったのだから仕方ないとはいえ、これから一緒に行動す
るのに名前を知らないのはいざというときに困るだろう。
名乗っていないのに名前を把握されるわけもないことは当たり前のわけで、ルークはあわてて
姿勢を正し、
「俺は、ルーク・フォン・ファブレ。ルークって呼んでください」
明瞭な声で名乗った。
ルークが名乗ったことで自己紹介をする雰囲気になったのか、カロルが一歩前に出て、
「ぼくはカロル。で、こっちがレイヴンでそっちに立ってるのがジュディス」
「で、こっちがリタにエステル。それにラピードだよ」
「ふん」
「よろしくお願いしますね」
「わふっ!」
と、手際よくメンバーを紹介をしていく。
紹介をされた方はにやっと笑ったり、意味ありげに笑って手を振ってきたり、露骨に不機嫌そ
うになったりと、それぞれがそれぞれの反応を返してきた。
最初の時に比べればいくらかは敵意が去っているようにも感じる。
「最後に、君の隣に立ってるのがユーリ」
「よろしく」
「ん、よろしく。足を引っ張らないように気をつけてくれよ」
最後に紹介されたユーリは挨拶と一緒に、ささやかな希望を口にした。
それはチクリとした棘が潜んだ内容ではあったが、最初の邂逅の時に比べれば幾分か柔らかい
ものではあった。
「そうならないようにがんばるよ」
それを向けられたルークは若干ひきつってはいたが、苦笑を浮かべてそう返した。
そう言われても仕方のない状況にいるのはよく理解しているのだ。
ましてや、今の自分は丸腰でどう考えても戦力として数えるには無理がある。
そう、しょうがないのだ。
そう自分に言い聞かせて、ルークはため息を付いた。
相手が怒るであろうことを予想しながらも、そう言う言葉をはいたユーリだったが、若干ひき
つった感じにはなっていたが、穏やかに流した相手にへぇっと相手の印象をいい方へと大幅に
修正した。
「いないわね」
「みつかりませんね」
どこまでも広がる天空の大地を探索しだして数刻、ユーリ達は目的の魔物を見つけることがで
きずに、未だ歩き回っていた。
天高く突き出た大地で景色はいいとはいえ、同じような景色ばかりが続けばいい加減飽きると
いうものだ。
ここまで魔物どころか獣の影すら見あたらず、レイヴンあたりは飽きてきたのか大口を開けて
あくびをかます始末である。
「そういえば、ユーリ達はいったい何のためにこんな所にきたんだ?」
途中乗船だったために、ユーリ達が何の団体で何の目的を持って動いているのか、全く把握を
していないルークが遅すぎるといえば遅すぎる疑問を口にした。
「ん?魔物の素材収集だけど?」
「魔物の素材収集って・・・・・・何のためにだよ」
武器でも作るのだろうか?
「知らねえよ。そういう依頼を受けたから取りに来てるだけだしな。ふつうの手段じゃここま
でこられないしな」
「ああ、確かに空飛ぶ手段がなくちゃ来れないもんな」
周りは切り立った崖、通常の手段ではここまでくるのでさえ命がけだろう。
ルークは彼らがさっきまで乗っていた船のことを思い出し納得の声を上げた。
何故魔物が船をくわえているのだろうと思ったが、魔物が船を運んでいると考えれば疑問の一
端の回答が出たといえるだろう。
「来れても目的の魔物を倒せなくちゃ素材は手に入らないけどな」
「倒すっていっても相手がいなくちゃ倒しようがないわよね」
ルークとユーリの会話に割り込むようにレイヴンがひょっこりと顔を出した。
「うわっ!!」
全く気配を感じていなかったのか、思わずとびすさるルーク。
その様子がツボにはまったのか、レイヴンは愉快そうに笑い声をあげた。
が、それが苛立ちの頂点に達したリタの逆鱗に触れたのか、「うるさい!」という声と共に顔
の横をファイアーボールが通り過ぎていった。
「ちょっ、リタっち当たったら危ないでしょうよ」
「っち、はずしたか」
「ええええ、今もしかして舌打ちした?はずしたかって、当てたら大惨事・・・・・」
「あああああ、もううるさ〜い!」
という叫びと共にリタから無数のファイアーボールが飛んできた。
「うわ、ばか。俺たちまで巻き込んでんじゃねえよ」
怒りに任せたそれは目標をちゃんと定めてうっているわけではないらしく、近くに立っていた
ユーリ達も巻き添えを食った。
「わあああ、レイヴンこっちこないでよ」
あくまで標的はレイヴンなので、当たり前だがレイヴンが逃げる方向にファイアーボールは飛
んでくる。
巻き添えを食ってはたまらないと、逃げる方向にいるメンバーが薄情な声を上げる。
そんな鬼気迫りながらもどこかほほえましい光景にルークは思わず笑っていた。
「なに笑ってんだ?」
「ん?」
いつの間に横にきていたのか、怪訝そうに問いかけてくる声に振り向けば、声音同様にこちら
を伺うように眉をひそめたユーリの姿があった。
「みんな仲がいいんだなと思ってさ」
「そうか?ただ単に大人気ねぇだけな気がするけどな」
「そうあれること事態が仲がいい証拠だと思うよ」
本当に仲が悪いのならこんな雰囲気にはならない。
こんな和気藹々とした雰囲気には。
そう心の中で付け加えながら、どこか納得のいかない顔でこちらをみてくるユーリをよそに、
ルークは目の前で繰り広げられている危ないじゃれあいにほほえましそうに目を細めた。
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ようやくお互いが自己紹介しました。
名乗ってないのに名前知っているのはさすがにないので、一応入れました。
ユーリがルークの近くにいるのは見張っているというのと魔物が出たときに庇いやすいようにという理由があったりします。
最初の比べると大分態度は軟化していますが、やっぱりまだ突き放している感じはありますね。
いまだにルークはトリップしてることに気付いてません。
最後まで気付かないままというのもありなのかもしれませんが、考えてる話の展開上いつかは気付かせないといけません
・・・・ううう、終わりまでの道のりが長いよぉ
もう1つの方に対して、こっちは気が向いたときに書くので、亀を通り越してナメクジ
更新になると思われますが、それでもいいという方は、気長にお待ちください。
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