*36話*
ルークがテルカ・リュミレースに来て一月が経った。
ここに来たばかりの頃は理解できなかった単語や世界の在り方などもある程度理解できるよ
うになり、最初は戸惑うことも多かったルークもすっかり下町に馴染んでいた。
ルークの柔らかで優しい性格と、その人をほんわかさせる愛らしい子供の姿で、下町のちょ
っとしたアイドルと化していた。
下町に来たばかりの時にさんざん迷惑をかけてしまった礼とだとばかりに、ルークは毎日み
んなの手伝いに精を出していた。
手伝いと言っても体が七才児なのでできることはそう多くはなかったが―――
「ルークー。一緒に遊びに行こーぜ〜」
日課の一つになっていた帚星の手伝いがひと段落を迎えた頃合いで、外から声がかかる。
ルークが窓からひょっこりと顔を出すと、そこにいたのは十二、三の少年たちだった。
年の頃からすると、ルークぐらいの兄弟がいてもおかしくはないくらいの者達だ。
ルークが下町に馴染むと共に仲良くなった小さな友人達。
自分より小さいルークは彼らにとって面倒をみる対象のようで、何かと構っては色々教えて
くれた。
今まで周りにいた者達とはまた違った、子供の視点での情報はなかなかに興味深い物もあった。
姿じたいは自分の方が幼いにしても、生きた年数よりも精神年齢が上なルークからみれば彼
らの方が面倒をみる対象に見えて仕方がない。
なので、ルークを一生懸命構おうとしている小さな友人達の姿は何ともいえない微笑ましさ
さえ覚えた。
「今いくよ。女将さんに声かけてくから少し待ってて」
そう言ってにこっと笑顔をその場に残し、帚星に引っ込む。
手伝っていたお店の掃除は終えていたので、遊びに出ることを女将さんに告げようとカウン
ターを振り返ると、ルークが言葉を口にする前に、
「遊びに行くんだろう?気をつけていっておいで」
と、笑顔で送り出された。
ほぼ毎日のように繰り返されていたやり取りなので、言われるまでもないと言うことなのだ
ろう。
親が子供を送り出すときに浮かべるような笑顔でそう言われて、照れくささを感じながらも
ルークは笑顔を返すように笑って手を振ると、
「うん、いってきます」
外で待っている友人達の元へと走り出した。
ガキンッ!!
甲高い音を立ててまがまがしいまでに鋭く尖った牙が受け止められる。
後ろに少女をかばいながらルークは足を踏ん張り剣を支える腕に力を込めた。
「ルーク!」
「大丈夫だから、それ以上こっちに来ないで」
筋力の落ちた体で今にもこちらに咬みつこうとしている魔物を支えるのは思っている以上に
骨が折れたが、ルークは相手を安心させるようにそう言って、友人達がこちらに駆け寄って
くることを阻止した。
今の状態では他の者をフォローする事は出来ない。
こちらの身を案じてくれている事は十分分かっている、自分の言葉で足を止めてはいるが今
にもこちらに走り寄ってきたそうにそわそわしている。
彼らの我慢の限界が来る前に今出せる最大の力で魔物を押し返すと、ルークは術技を出すた
めに剣を構え、フォンスロットを開きフォニムを招き入れる。
その時フォンスロットにピリピリとした違和感を感じながら、魔物が立ち直る前にルークは
気合と共に術技を繰り出した。
ルークinヴェスペリア第36話をお送りしました。
ようやく時間が動き出しました。
本編前に始まる前に書いて置きたい事も後少しで書き終えられそうです。
といってもまだまだかかりそうですが・・・・・50話行く前に終えられるといいんですがね。
話数がすごい事になってるんで本編入ったら本編前の話はページを分けようと思います。
亀の歩みですみません(汗)
続きはのんびり待ってください。
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