*37話*












「で、何か弁解はあるか?」

「・・・・・・全くございません」



怒っている事が如実に分かるその冷たい視線に見下ろされながら、ルークは冷や汗をだらだ

ら流しながら気まずげに視線を横へと逸らした。





小さな友人達に誘われて遊びに出たルークは、途中で別の友人に出会い、その小さな友人が

妹を捜しているというのを聞いて手伝うということになったのだ。

市民街の方まで探しに出たのだが捜し人は見つからず、もしかしたら結界の外側近くの方に

いってしまったのではないかと言う話になり、大人達に知らせに行く者と捜索を続ける者と

に分かれ、ルークは捜索を続ける方に加わった。

と、ここまでは問題なかった。



ルーク達が危惧していた通り、探していた少女は下町のはずれの方にいた。

しかも目と鼻の先が結界の外という、普段だったら近寄ることのないであろうところに。



「ターシャ!!」



少女を捜していた少年がその子の名前を呼びながら走りよった。

その時だった、少女の臭いをかぎつけたのか狼によく似た形状の魔物が入り口付近に現れる。

少女に走りよる少年はその存在に気づかない。



「危ないっ!!」



ルークはそう叫ぶと考える間もなく走り出し、魔物と少年達の間に滑り込む。

すぐにフォンスロットを開きローレライの鍵をとりだした。

間一髪のところで魔物の牙から少年達を守ることができた。

そして術技を放って魔物を撃退――――と、ユーリが怒っているのはこの事だろう。

無茶はしないと約束しているのに、毎回それを破っているのだ。仏の顔も何とやらいい加減鬼

の顔になってもおかしくはない。



「あのな、ターシャ達を守ったことを悪いとはいわねえよ。俺が怒ってんのはそこじゃねえ」

「結界の外側近くまで行ったこと?」



そこが怒りのポイントではないと言うことはそこしか考えられない。



「分かってんじゃねえか」



そう言ってじろりとルークを睨んだ後言葉を切ると、ユーリは大きくため息をついた。



「なんではずれまで行く時に俺を呼びに来なかったんだ。街の中心部と違って外縁部は魔物が

出るから危険だって言ってた筈だよな。いくら俺がハンクスじいさんの手伝いにいってたから

って、声をかけられれば一緒に行ったし、お前もけがなんてしなかっただろうが」




そうなのだ。

先程の回想にはまだ続きがある。

ターシャ達に襲いかかってきた魔物を撃退したルークは、他のみんなにケガがないことを確認

すると安堵の溜め息と共に警戒を緩めてしまった。

それがいけなかったのだろう。

襲ってきた魔物は撃退したとはいえ、その場所が危険であることは変わりなかったというのに、

その事をつい失念していたのだ。

ずっと戦いの中に身を置いていた筈の身としてはありえない失態だ。



「ルークっ!!」



ともすれば悲鳴のようにも聞こえる呼びかけ。

せっぱ詰まったその声は場の状況が急変したことを伝えてきた。

はっとしたようにゆるんでいた気持ちを引き締め、顔をはね上げたルークの視界いっぱいに赤

い口腔が映る。

気を緩めている間に距離を詰められていたのだろう。

剣を振るには距離が無さすぎる。

とっさに手を突きだし、



「烈破掌!!!」



掌から放たれた衝撃破に迫ってきていた魔物が吹っ飛んだ。

吹き飛んだ魔物を追い、起きあがってくる前に剣を急所に突き刺してとどめを刺して、今の状

況を把握するために周りを見回す。

ルークが一瞬であろうと気を緩めている間に状況は最悪ともいえる展開へ、叫び声聴いた瞬間

に頭に思い浮かんだ想像よりも遙かに悪い物へと変じていた。

切り捨てた魔物の血の臭いに引かれたのか、他の魔物が集まってきてしまっていたのだ。

しかも間が悪いことに複数で集まってきてしまっていたために、ルーク一人で相手をするには

少々無理があった。

自分一人だけだったらば追ってくる物を倒しながら逃走、という手段もとれただろうが、ここ

には子供達がいる。

肉が軟らかい子供は魔物にとって格好の餌――ご馳走ともいえるだろう。

しかも大人に比べて足が遅いため、狩りやすい。

まさに襲ってくださいといわんばかりのこの集団を魔物が諦めるとは思えない。

その子供達を守りながら逃走するなど、どんな手段を考えようと無理としかいいようがない。

それでもルークは友人達を守るために走った。



「ターシャ、バリー、俺からなるべく離れないで。ファニ達も早くこっちに!!」



ターシャ達を連れて距離が開いてしまっている者達の元に急ぐが、魔物がそれを待っていてく

れるはずもなく次々に襲いかかってくる。



「魔神拳!!」



術技を放ってその魔物達を退けるが、



「うわあっ!!」



悲鳴が上がる。

苦痛のこもったその叫びにルークが振り向くと、トリスの二の腕から血が滴っているのが見

えた。

襲いかかってきた魔物を避けようとしたがよけきれずに爪を引っかけられてしまったようだ。

その場に満ちたさらなる血の芳香に、歓喜の咆哮をあげて魔物達が興奮するのが分かった。



「トリスっ!!」



確実に魔物のターゲットにされたであろう友人の名を叫びながらルークは焦ったようにきび

すを返す。

その瞬間、致命的ともいえる隙がルークに生まれた。

それを逃す魔物ではなく、彼の死角にいた魔物がルークの急所に向かって牙をむいた。



ルークは気づかない。





上がった悲鳴からようやく自分の状況に気づくが、今からではどうやっても間に合わない。



くるであろう痛みに備えるように瞼をぎゅっと閉じたときだった。

















「ギャウンッ!!」



魔物の悲鳴が上がる。











襲ってくるはずの痛みがいつまでたってもこないことに疑問を感じたルークは、瞑っていた

瞼を恐る恐る開いてみる。

魔物がいるはずだったそこには凛々しささえ感じる佇まいで、ルークの前に立つラピードの

姿があった。









ルークinヴェスペリア第37話をお送りしました。

半分以上を戦闘シーンと回想で埋めてしまってすみません(汗)
戦闘シーンとか書くの好きなので書きすぎてしまうんです。これでもだいぶ削った方だったりします・・・・・
ルークが危ない目にあってばかりですが、決してルークが弱いわけではないんですよ。
ただ一人で出来る事限界以上の状況になっているだけで・・・・・・

そしてオリキャラいっぱいですみません・・・本編の方にあまり子供が出てこないから勝手に捏造して出して
しまいました;
できるかぎり名前だけ出てくるような感じにしてみたんですが、不快に思われた方がいらしたら申し訳ないです。
多分この部分以外ではそんなに出張らない予定なので見逃してもらえると嬉しいです。
しかし自分のネーミングセンスのなさに本気で絶望しそうです・・・・・・・私絶対名付け親とかなれないよ|||orz


続きはのんびり待ってください。








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