*34話*














振り下ろされた剣がルークに届く直前、ルークは無意識のうちに手を掲げていた。









素手で剣を防げるとは思っていなかった。

思えばその行動は本能からくるものだったのだろう。





掲げられた手は、危機に反応するかのように光り出し、他を圧倒するようにまばゆく輝くと、

その光は収束するように一つの形をかたちどった。











音叉のような奇妙な形の剣へと―――――









それはどこかへ消えてしまったはずの、ローレライの鍵。











ルークの頭を切り裂く寸前だった騎士の剣は光を伴って出現したそれに受け止められ、硬質で

甲高い悲鳴を上げる。







「なっ!!!!」





自分の絶対的優位な状況を覆したその光景は、騎士の表情を驚愕一色に染めるに足るものだっ

た。

あまりにありえなく、あまりに非現実的な出来事、現象にその場にいた全員の動きが止まる。

空間が凍ったように硬直していた状況からいち早く復帰したのはユーリだった。

何回かルークの常識ではあり得ない現象に出くわしているユーリはいち早く硬直から復帰でき

た。

その状況を作り出した本人であるが、時が止まったように固まっていたルークの肩をつかんで、

背後へと放る。



「こんの、バカっ!!少し考えて行動しやがれ」



と、叱りつけながら。

ルークを危険な位置から遠ざけたユーリは、未だ呆然としている騎士に術技をたたき込んだ。

今度は目を覚ましてもすぐには切りかかって来れないくらい強く。

術技をたたき込まれた騎士は、ようやく水から上がれたアデコールを巻きこんで吹っ飛んだ。

建物まで吹っ飛んだ騎士が2人して気絶したのを確認し、剣を鞘に収めるとユーリはルークの

手をつかんでその場から逃げるようにかけだした。

先ほどまで周りにいた野次馬たちも、ユーリが騒いでいる内に逃げたのか、路地にはユーリた

ちと騎士以外誰もいない。

結果、路地には伸びた騎士たちだけが残された。



















騎士たちを伸した後、ほとぼりが冷めるまで部屋にこもることになったユーリたちは、顔を付

き合わせてまた再び姿を現したローレライの鍵をのぞき込んでいた。



「・・・・・なあ、これってお前が昨日胸から出してたやつだよな?」



顔をローレライの鍵に向けたまま問う。

それに頷くことで肯定するルーク。



「変わった出現の仕方だったが、一体どういう仕組みなんだか・・・・」



と、これは独り言だったがきちんと返事が返ってきた。



「予想だけど・・・・・・・多分コンタミネーション現象だと思う」

「コンタミネーション現象?」



また小難しそうな名称が出てきたな。

と、ユーリが思ったかどうかは定かではないが、オウム返しに問い返す。



「うん、ジェ・・・・仲間が槍を出した時と出方が似てたから」



ルークの脳裏に青い軍服の裏の読めないにこやかな表情で魔物と戦うジェイドの姿が浮かんだ。

いや、いつもそんな表情だったわけではなかったのだが・・・。

何もない空間から光を伴って武器を出現させるあの光景が、先程のローレライの鍵の光景とか

ぶる。



「ふ〜ん、その仲間って、結界の外を旅してた時の?」

「うん・・・・世界を一緒に回った、俺の大事な友人の一人だよ」





この世界ではないが、世界の為に共に奔走した仲間達。

交わした約束はもはや果たせそうにないが・・・・。

知らず寂寥を含んだ苦笑が浮かぶ。





「・・・・そうか」



と、つぶやきながらユーリは視界に入ったそれを、自分がどんな顔をしているのか自覚してい

ない子供からそっと目をそらした。





ほんの少しの間回想の内に沈んでいたルークだったが、ポフンとした感触を膝に感じて顔を上

げる。

いつの間にか傍らに寄り添うようにラピードがうずくまっていた。

ポフンとしたものは膝に乗せられていた前足の肉球の感触だったようだ。

やや感傷的になっていたルークを気遣ってのもののようで、こちらを見つめてくる凛々しい瞳

には、どこか温かな光が宿っていた。













ルークinヴェスペリア第34話をお送りしました。

5話で姿を消していたローレライの鍵が戻ってきました。
コンタミネーション現象での収納にはちゃんと理由があるのですが、それについては本編の方で触れるつもりです。
しかし、ようやく書きたかった部分に到着しましたよ。
本編でユーリのせいでアデコールが風邪引いたのくだりをどうしても書きたかったんですよ。
どうせ過去からやってるんだから書いちゃっていいよね〜、と・・・・・・・・・・すみません(汗)


続きはのんびり待ってください。








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