*33話*














「ユーリッ!!!!!!」



背後であがった切迫した声に、ユーリはにっと笑って肩ごしに振り返った。



「よ、おはよーさん。ずいぶん遅くまで眠ってたんだな」



場の雰囲気に合わない、むしろぶち壊そうとしているようにすら思える気楽な口調で挨拶を返した。



「あ・・・・・え・・・、うん、おは、よう・・・・・・」



目の前で起きている状況と、ユーリの様子の不一致さと惑うように、目をぱちくりさせながらも、

ルークは何とか返事を返した。

ちょっとぎこちなかったのはまあ、ご愛敬だ。



「何してるんだ?」



水路に落ちた騎士を見つめながら、ユーリに歩み寄ったルークがそう問うと、



「見てのとーり」



と、答えになっていない答えが返ってきた。



「いや、見てわからなかったから聞いたんだって・・・」

「ははは、そりゃそうか」



思わずジト目になってしまったルークに、ユーリは朗らかな笑いを浮かべた。



「人をつき落としておいて和やかに話してるんじゃないのであーる!!!!!!!!!」



ごもっともな主張である。

水路に落とされてからも重い鎧のおかげで流されることなく岸にたどり着いたはいいものの、突き落

とした本人が全く気にした様子もなく楽しげに会話しているのに怒りを感じても誰も責めたりはしな

いだろう。

それに対しての答えが殊勝なものであるとは限らないのだが・・・・・。

現に、



「落ちたのは自業自得だろ。俺の知ったこっちゃないね」

「あ、ごめんなさい。大丈夫ですか?」



と、殊勝とはほど遠い答えが返ってきた。

当事者でない者の方がよっぽど殊勝である。



「ぬぬぬ、人を突き落としておいてそのセリフ。そちらの子供の方がまだ礼儀正しいとは、嘆かわし

いのであーる」



「騎士に対しての礼儀なんて、最初から持ち合わせてねーよ」

「・・・・・ユーリ」



全く謝る気が皆無なユーリと水の中のアデコールを交互に見て、ルークは困ったように眉を寄せた。

とりあえず水からあがろうとしているアデコールに手を貸そうと、ルークが水路へ一歩足をふみだし

た時だった、



「ふぇっーくしょーーんっ!!!」



やっと水から上がりかけていたアデコールが、派手なくしゃみをあげると共にまた水の中へと逆戻り

を果たしていた。



「何やってんだよデコ。ルークを巻き込んだら承知しねえぞ」



アデコールが落ちる直前にルークの肩を掴んで下がらせていたユーリは、薄情にもほどがある言葉を

はいた。

幸か不幸かそれを言われたアデコールは水が鼻に入ったり焦ってもう一度水の中で転んだりと、そち

らの方に気を取られてこちらの言葉が耳に入っていないようであった。

その上先ほどのくしゃみが止まらなくなったようで、くしょんくしょんと忙しい。

そんなアデコールの姿に力が抜けたようで、ユーリの顔が苦笑にも似た表情に変わりかけたときだっ

た。

後ろの方でのびていた騎士が目を覚ました。

まだ衝撃から戻りきっていないのかどこかぼんやりとした目で通りを見回していたが、ユーリの姿が

瞳に映った瞬間、一気に剣呑な光をおびた。

先ほどユーリにからかわれたのを思い出したのか、目をつり上げて傍らに落ちていた剣を乱暴に掴み、

ゆらりと立ち上がる。

そして、一歩一歩とユーリに近づいていく。

完全に相手を傷つけることを目的としたその動きに、気付く者はいない。

騎士がユーリの背後まで近付き剣を降りあげるまでいって、ようやく傍らにいたルークが気づいた。

しかし状況に気付くのが遅すぎた。

ルークが殺気に気づいて振り返った時には騎士の剣が今まさにユーリに切りかかる寸前だった。



「危ない!!ユーリっ!!!!」



少しの躊躇もできない緊迫の瞬間、ルークは自分が素手である事も忘れてユーリをかばうようにユー

リと騎士の間に体をすりこませていた。

間に入った子供の姿は騎士の目にも入ったはずだが、振り下ろされる剣の速度が落ちることはなかっ

た。



「ルークっ!!!!」



ルークの叫びで事態に気付いたユーリがあわててルークの体を下がらせようとしたが、それは遅すぎ

た。

絶対的な死をまとった剣がルークに届く。

そして――――――













ルークinヴェスペリア第33話をお送りしました。

ルークのパートが戻ってきました。
これでようやく書きたかった部分にたどり着けそうです。
ほんと展開が遅くてすみません(汗)
本編までの道のりが遥か彼方過ぎてちょっと泣きそうです・・・・・・


続きはのんびり待ってください。








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