*29話*
たれたままだったルークの腕をベッドの上に戻していると、それに促されたかのようにルー
クのまぶたが微かに震えて、ゆっくりと開かれる。
「・・・・・・・ふぁ・・・・・・・ユー・・・リ?・・・・」
寝起きのとろんとしたまなざしで子供特有の愛らしく舌足らずな声音でユーリの名前を呼ぶ。
先ほどの無機質な声とは正反対な年相応な声。
今が寝起きとばかりに目を眠そうに瞬かせ、ぼんやりとユーリを見上げてくる。
「ん?なんだ?」
本当に元のルークに戻ったのか疑いながらも柔らかい口調で問い返す。
まだ半分夢の中にいるようなぼんやりとした視線がユーリの視線と絡まると、ホワンとした
音がしそうな柔らかで幸せそうな満面の笑みを浮かべた。
子供の魅力が満タンにつまったその笑顔に、自分の胸がきゅんとなったような気がした。
それと同時に愛しさがせり上がってきて、自分でも気付かないうちに柔らかな笑みを浮かべ
ていた。
ルークの口が何か言いたそうに半開きになったのに気付いたユーリは、聞き取りやすいよう
に体を倒してその小さな口に形のいい耳を寄せた。
しかし、聞こえてきたのは言葉ではなく再び夢の住人に戻った事を示す、穏やかな寝息だっ
た。
なんだか拍子抜けしてしまったユーリは肩をすくめながら体を起こすと、うなされている間
に落ちてしまったのだろう上掛けを拾い上げてルークにかけてやる。
他に落ちているものがないことを確認したユーリは、ベッドを揺らさないように静かに立ち
上がった。
まるで人格が入れ変わったかのようなあの不可思議な出来事が何だったのかは分からない。
ただ、起きた出来事をルークに聞いたとして、その答えをルークが持っていないだろう事は
予測できた。
そう根拠のない確信を抱いてしまえるほどの感情があの声にはあった。
まるで親が子に向けるような深い愛情と心配、そしてもう会う事の出来ない者に対する哀惜
の感情。
ある意味並び立ちそうにない感情を思い、何を馬鹿なとユーリは頭の中で切り捨てる。
もしあれらの感情が並び立つのだとしたらそれはきっと――――――と、そこまで考えてあ
わてて頭を振ることでその考えを打ち消す。
浮かんだ考えは目の前で幸せそうに眠っている姿からは到底連想できない事。
一瞬でも考えてしまった心地悪さをユーリはため息をつく事で振り払う。
まだまだ夢の住人でいそうなルークに、このままここにいても仕方ないと判断したユーリは
ベッドヘッドに立てかけたままだった剣を掴むと、眠る子供を起こさないように足音を殺し
ながら出口に向かって歩き出した。
部屋を出るときに肩越しに振り返れば、穏やかな寝息を立てて眠る子供のベッドのすぐ下に
寄り添うように座る相棒の姿が見えた。
ルークinヴェスペリア第29話をお送りしました。
久しぶりにユリルクっぽいのを書いた気がします(ユリルク連載なのに何たる事)
作中でユーリのきゅんは父性(親バカへの一歩)スイッチが入った音です。
いわゆる胸キュン。
ユーリはならないだろうと思いつつ書いてしまったのですが・・・・・・石を投げられる準備は出来てます。
続きはのんびり待ってください。
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