*27話*














階段を登りユーリが部屋に戻ると、抜け出してから時間が経っているにもかかわらずルークは未だ夢の中だった。

部屋を出るときと違って苦しそうに眉を寄せて唸っているルークの姿に、何事かとベッドに駆け寄ったユーリだっ

たが、それで分かったのは彼が寝ているという事実だけだった。

気付かないうちに詰めていた息を吐き出して、寝汗でルークの額にはりついた朱毛を払ってやる。

そのまま寝顔を覗き込んで様子を伺うと、一体どんな夢を見ているか脂汗をにじませて眉を寄せながら何かを呟い

ているのが聞こえた。

同じような言葉を繰り返し呟いているのは分かるのだが、その半分以上が不明瞭な発音で何を口にしているのか分

からなかった。

胸をかきむしるようにシャツを握り締め苦しそうにうめいている様子から、まだ時間があるが起こした方がいいと

判断して、揺り起こすべくその小さな肩に手を置いた。







そのときだった―――――――

















「―――――――つながった・・・・・」



















それは唐突だった。

何の前触れもなくその言葉は吐き出された。

感情という感情を削ぎ落としたような、されども無感情とはいえないような矛盾するような平淡さを含んだ声。



それは今までうなされていたはずのルークの唇から発せられた。

よく聴けば確かにルークの声なのに、同じ声帯から出ているとは到底思えない、まるで別人のような声音。



「・・・・・・・ルーク?」



肩に乗せた手をそのままにユーリは戸惑うように目を瞬かせ、問うように名前を呼んだ。



ルークは答えない。

まぶたは閉じられ、体の力は抜けたまま。

しかし、先ほどまでうなされていたのが嘘のように、その表情は穏やかなものになっていた。







まぶたがかすかにふるえ舞台の幕が上がるようにゆっくりと目が開かれる。

間からのぞいた翠の瞳は、なにを見ているのかどこかうつろだった。



「・・・ルーク?・・・・・・大丈夫か?」



どう見ても普通の状態ではないルークに、ユーリは肩に置いた手に力を入れてやや乱暴にその小さな肩をゆすった。

それでももとの状態に戻らなかったらどうするかと思いながら、再び顔を覗き込む。

と、



「ううううううううう」



傍らから響いてきた唸り声に、肩から手を離してそれを上げている発声元を見つめた。

いつの間に傍に寄ってきていたのか、そこにはラピードの姿があった。

今にも跳びかかろうとするように臨戦態勢のままルークをじっと見つめて威嚇の声を上げている。



「一体どうしたんだラピード」



お前の唸っている相手はルークだぞと、警戒心全開な相棒に声を掛ける。

すると、うつろな目で宙空を見つめていたルークの目が、ユーリの声に反応するようにすいっと動いた。

ラピードから目を上げたユーリと引き合うように視線が絡む。

ユーリはそのうつろな瞳と目が合った瞬間に背筋を何かが走るのを感じた。

悪寒でもなく戦慄でもなく恐怖でもないそれは所謂畏怖というものだったのかもしれない。

交じり合ったうつろな視線を追うように、どこか表情の欠けた顔がユーリに向けられ、







「そうか、お前が・・・・・・・・」



「 ? 」





うつろな目が瞬き何かに納得したような感情がにじむ、しかし口から漏れたのは感情の削ぎ落とされたよ

うな別人のような声。

目の前に横たわっているのは確かに知っている人間のはずなのに、全く知らない人間と話しているような

落ち着かなさを感じる。

ルークの身に一体何がおきているのか分からず、ユーリはひたすら困惑を返すしかなかった。

とにかく状況を理解しようと頭を回転させてまず真っ先に浮かんだのは、平時であれば馬鹿馬鹿しいと切

り捨てたであろう問いだった。













「・・・・・・・・・あんた・・・・・誰だ?」









ルークinヴェスペリア第26話をお送りしました。

ようやく少し話が動きます。
ルークの口を使ってローレライとユーリが会話・・・・・しているのか?
ユーリはローレライの存在というか、ルークのローレライとの関係を知らないからかなり困惑しています。
というか、ここを書いてて思ったんですが、こういうのが実際に起きたらかなりホラーですよね。

ユーリが近くにいないとルークがうなされるとかちょっと萌える今日この頃です。


続きはのんびり待ってください。








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