*24話*
上着を取ってきたルークが扉から現われると、ラピードは待ちかねたかのように立ちあがり、先導するように
階段へと向きを変えた。
その時だった。
「あれ、ラピードじゃん。こんな所で何してるんだよ?」
ちょうど下から上ってくる途中だったテッドに声をかけられた。
今ままで座っていたために見えなかったらしく、突然現われたように見えるラピードに驚いたような声だった。
そんなテッドにラピードは一声鳴いた。
「どうしたんだラピード?」
そんなやり取りの間にこちらの方までやってきたルークが不思議そうに首をかしげた。
ラピードに近付いたとたんにラピードが吠えたので少し驚いた様子だ。
今のルークの立ち位置からは死角になっていてテッドの姿は見えない。
一体何に対して吠えたのか分からないルークはそれを確認しようとさらにラピードに歩み寄った。
ラピードが立っている階段付近まで近付いた時、ちょうど階段を上りきったテッドと目が合った。
「おはよう――――・・・えっと・・・・・」
おはようというには遅い時間な気もするが、こんにちはには早い時間なので妥当ともいえる挨拶をして、相手
の名前を呼ぼうとするがすぐに思い出せずに口ごもる。
ちゃんと紹介されたわけではないが、確か耳にしたはずなのだが・・・・・・
ルークが相手の名前を思い出そうとうんうん唸っている間に、挨拶をされた方は顔を輝かせて満面の笑みを浮
かべて、
「おはよう!!元気そうで良かった。ちょうど今呼びに行こうと思ってたんだ」
弾む声でそう言ってまだうんうん唸っているルークの手をとった。
「俺テッドっていうんだ。よろしく!―――まだ朝飯食ってないだろう?もういい加減起きてる頃だろうって。
下に用意してあるんだ」
ルークが何に悩んでいるのかを察して自分の名前を名乗りながらも、ルークが転ばない程度にぐいぐいと引っ
張り、あっという間に『彗星』の中へと連れ込んだ。
ドアの上につけられたベルがカランカランと軽やかな音を立てた。
その音を耳にしてカウンターの奥で忙しそうに動き回っていた女将が振り返る。
今入ってきたばかりのテッドを目に入れるや否や、
「テッド、ちゃんと連れてきてくれた?」
「連れてきてるよ! ほら」
そう言って女将から見えやすいように体を横にずらすと、後ろに立っていたルークの姿が目に入る。
「おはようございます」
「おはよう、その分だと良く眠れたようだね。昨日の今日で体調は大丈夫かと心配してたけど、大丈夫そうで
安心したよ」
女将はそう言うと朗らかな温かい笑顔を浮かべた。
他にも何か言おうとしたようだが、ちょうどお客が来たらしく「食事はそっちのテーブルに置いてあるから」
と捲くし立てるように言って、接客に戻っていった。
女将に指されたテーブルを見るとそこにはまだ湯気の立つおいしそうなご飯が置いてあった。
テッドに手を引かれるままにそのテーブルに近付いたルークの姿を目にして、彗星で食事をとっていた何人か
がこちらの方を向いてきた。
「お、昨日の坊主じゃねえか。カラダとか大丈夫か?」
「元気そうでなによりだわい」
「風邪とかひいてねえか?」
ルークの姿を視界に入れるや否や次々と声をかけてきた。
その全てがルークの事を気遣ったものばかりで、ルークは胸がいっぱいになって不覚にも泣きそうになった。
それをグッとこらえて大丈夫な事を告げると、今度は頭を撫でられた。
一人がそれをすると我も我もとみんなが寄ってきて代わる代わる一声ついでに頭をぐしゃぐしゃに撫でて行
った。
近くに立っていたテッドは揉みくちゃにされているルークをただ楽しそうに眺めていた。
そんなのがしばらくの間続き、それらが一巡りしてようやくルークは朝食にありつけた。
途中で店に入ってきた人間もそれに加わった為に、彗星につれてこられてからそれなりに時間が経ってしま
っていた。
おかげで朝食というよりもはや昼食である。
ようやく食事を口にする事が出来たルークはご飯を口に入れてほわっと幸せそうに微笑んだ。
長い時間放置されてしまったそれはすっかり冷めてしまっていたが、どこか懐かしい気持ちにさせられるほ
っとする味がした。
それは、少々口調が乱暴な所はあるが性根は暖かい下町の人々のような味だった。
幸せな気分になりながらもくもくと食事を続けていたルークだったが、それは何かが派手に水に落ちたよう
な盛大な水音によって中断した。
一体何があったんだとあわてて席を立つルークだったが、周りに座っているものたちは何が起きたのかを察
しているのかみな苦笑を浮かべながらも立ち上がる者は居ない。
自分だけあわてているという状況にルークは困惑した。
何でみんなこんなに落ち着いてるんだ?
「急に立ったりしてどうしたんだよ?」
困ったように眉を寄せて立ち尽くしているルークにテッドが声をかけてくる。
心配そうなそれにルークは抱いた困惑を口にした。
「外で水音が上がっただろ?何かあったかもしれないのに何でみんな反応しないんだ?」
どこか途方にくれているかのような口調で言われた事に、テッドはああ、というような顔をして納得したよ
うにうなづいた。
「ああ、それきっとユーリだよ」
「ええっ!!??」
思いもよらない名前が挙がってルークは驚愕した。
まさかさっきの水音は―――――――ユーリが水路に落ちた音なのか!!
食べ途中の食事を放り出し、ルークははじかれたように入り口に向かって走り出す。
何でみんなそんなに落ち着いてるんだよ!と内心起こりながら。
血相を変えたルークに、誤解を与えてしまった事に気付いたテッドはあわててルークの後を追った。
「ユーリッ!!!!」
その名前を呼びながら外に飛び出たルークが最初に目に入れたのは、水路に落ちた男を見て笑っているユーリ
の姿だった。
「・・・・・・・・・・・・・・えーと・・・・」
どうゆう状況ですかこれ?
ルークinヴェスペリア第24話をお送りしました。
久しぶりにテッドが登場です。
早速兄貴風ふかしてますね。
下町のみんなに頭をなで繰り回されるルークが書きたかったんで満足です。
続き書くのが遅くてすみません(汗)
続きはのんびり待ってください。
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