*21話*
「・・・・・・・ユーリ、このタイミングでそういう冗談を言うといくら僕でも怒るよ?」
もうすでに怒ってねえか?
思わず心の中で突っ込みつつ内容が内容な為にユーリは嘘でないことをどう説明するか悩んだ。
嘘は言っていないが自分の言葉を信じている様子は目の前のフレンからは全く感じられない。
それどころかにこやかに笑ったその目が笑っていない。
つきたくなるため息を飲み込みつつ、
「嘘みたいだけど嘘じゃねえよ。最初に冗談みたいな状況だったって言っただろうが」
「・・・・・まさか・・・・・本当の話なのか?」
出来れば嘘と言ってくれというような顔をしてこちらを見てくるフレンに対し、ユーリは無言のまま沈痛な
面持ちでうなずいた。
それを見たフレンは衝撃を受けたように片手で顔を覆うと黙り込んでしまった。
しばらくの間二人の間に会話はなかった。
落ちた沈黙を破ったのはフレンだった。
「・・・・・・信じたくはないが百歩譲って光の中から生まれたという話は信じるよ。だけどルークが別の
世界の人間かもしれないというユーリの考えに賛同することは出来ない」
頭の中で何度も議論したのだろう。
心の底からは信じてはいないといった表情を浮かべながら、目の前に広がる夜の宵闇に包まれた下町を見つ
め、フレンは搾り出すように言った。
「・・・・・・そうか」
そんなフレンを横目で見つめユーリは静かに相槌を返した。
フレンは納得しないだろうことは分かっていた。
鋭くて頭も切れるフレンだが、物事に対して堅物なところがあるからだ。
現実的な話ならまだしもこのような非現実的な話は確固たる証拠を自分の目で見ない限り納得はしないだろ
う。
「あまりにも現実味がなさ過ぎる。過去に同じようなことがあったなら少しは納得も出来るかもしれないが・
・・・・」
「何事にも初めてというものは付き物だと思うぞ」
「今回が初めてという保証はないだろう?」
「・・・・なにが言いたいんだ」
含むようなフレンの言葉にユーリは眉をしかめた。
「ルークの言うエルドラントが実在するかどうか、それとこの世界について何の知識も持たない人間が現れた
前例がないか僕なりに調べてみる」
そういうとフレンはもたれかかっていた壁から背中を離した。
「信じる信じないは全てを調べてからにすることにした」
何かを吹っ切れたような顔をしてフレンは言い、閉まったままの扉を振り返る。
「どちらにせよ。ルークの帰る場所を見つけるのに努力は惜しまないさ」
部屋の中で眠っている子供の事を思って、フレンは穏やかに笑ってそう言った。
表情の読めない顔でそれを見ていたユーリはフレンの言う、ルークの帰る場所が見つかるという可能性がゼロ
に等しいだろうことを感じていた。
「見つからなかったら」
だからそう問いかけたのも必然。
「その時は僕らがルークの帰る場所になればいい。ユーリだってそのつもりだったんだろう?」
「・・・・・まあな」
否定するなんて事はないと確信している顔で断言したフレンに、かなわねえなと思いながらユーリは苦笑をこ
ぼした。
「じゃあ、そろそろおいとましようかな」
話したい事を話し終えてすっきりしたのだろう、フレンはシリアスだった空気を振り払うようにことさら明る
い口調で言った。
「話したかった事は話せたし、そろそろ帰らないとホントに不味いからね」
「明日寝坊すんなよ〜」
「ユーリじゃあるまいし、そんなへましないよ」
茶化すように半目の棒読み口調で言ってくるユーリにこちらもいたずらっ子のような表情で言い返すとフレン
は階段の方へと歩き出す。
そして降り口の所で立ち止まって肩越しに振り返り、
「何かあったら連絡してくれ。僕の方で進展があった時も連絡をよこすから」
「ああ、こっちのことは任せとけ。フレンも調べるのに無茶だけはすんなよ」
「それはこっちのセリフだよ。じゃあ、ルークの事頼んだよ」
言ってフレンは軽快に階段を下りていき、下町の出口へと消えて行った。
それを無言で見送って、ユーリは息をはいて目の前の欄干に寄りかかる。
「言われなくてもちゃんと面倒見るさ。放ってなんておけるかよ」
子供っぽくない子供の事を思いながら誰に言うでもなく口にして、雲ひとつない空を見上げた。
空にはルークと出会った昨夜と同じように満天の星々が輝いていた。
ルークinヴェスペリア第21話をお送りしました。
ようやく一日目が終わりました。
一日が終わるのに20話を費やしました。どんだけ長い一日だよというツッコミは甘んじて受けます。
私も自分に対してすでにツッコミました。
とにもかくにもこれでそれぞれの立場というか、考えの在り方が決まった気がします。
自体を完全に把握したルーク、何となく察しているユーリ、懐疑的なフレン。
この後どう展開させていくか考えてて楽しいです。
最初の段階で書きたかったものは大体書けたので、この後はもう少し時間の経ち方が早くなる・・・・・・予定です。
続きはのんびり待ってください。
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