*20話*
下町のみんなから貰った食べ物は多種にわたり、3人で食べてようやく明日の朝ご飯分が残るほどの量
だった。
先ほどまで楽しそうに話していたルークだったが、さすがに水路に落ちたりそのまま流されたりと大
変な事が続いた一日だったからか、会話の途中で糸が切れたかのように寝てしまった。
それを合図にささやかな夕食会はお開きとなり、ユーリがテーブルにもたれて寝てしまったルークを
ベッドに運ぶ為に抱き上げると、テーブルに散らかった食器類を持ってフレンが部屋から出て行った。
汚れた食器を洗いに行くついでに、『彗星』の女将さんに借りた分を返しに行ったのだろう。
抱き上げても起きる様子のないルークをベッドに横たえて掛け布団をかけてやると、途端にやる事が
無くなってしまいユーリは腰に手をやると息をはいた。
幸せそうな顔して寝息を立てているルークの顔を見て思わず苦笑する。
「幸せそうな顔してまあ・・・・・・・ほんと間抜け面」
どんな夢を見ているのかふにゃあとした顔でむにゃむにゃ言っているその顔は、まさに平和そのもの
だった。
知らず知らずの内に優しい目でルークを見つめていたユーリだったが、ドアノブがまわされる音が聞
こえて空気が動いたのをきっかけとしてまたもとの顔に戻った。
「ユーリ」
寝ているルークに気を使ってだろう、常に比べて抑えられた声。
「フレンか」
つぶやきながらユーリは振り返った。
食器を洗ってきたにしては早い帰還だが、フレンの腕に食器の姿がないので、大方こっちで洗っておく
と女将さんに全部持っていかれたんだろうと予想がついて、交わされたであろうやり取りに苦笑が浮か
んだ。
「まだ戻らなくて大丈夫なのか?明日早いって言ってなかったか」
「実を言えばそろそろ戻らないといけないかな」
肩を竦めながらフレンは答えると、足音を殺しながらルークの眠るベッドの脇までやってきた。
そしてユーリの横に並んで静かに寝息を立てているルークの顔を覗き込み、その天使のような寝顔に思
わず笑顔がこぼれた。
「幸せそうな寝顔だ」
「ああ」
まるで子供の寝顔をのぞき見ている親のような言葉を交わして二人は少しの間静かにルークを見ていた。
どれくらい時間見ていただろう、部屋に満ちていた心地良い沈黙を破るようにフレンはつぶやいた。
「少し話がしたい」
部屋の雰囲気にそぐわないどこか硬質さを感じさせる声音。
ユーリは無言で視線だけをフレンにやった後少し考えるように目を逸らし、
「・・・・・外で話そう」
言って部屋の外へときびすを返した。
「話したいことってのはルークの事か?」
ルークを起こさないように静かに閉じられた扉を挟んで二人は左右の壁にもたれかかり、言い出す言葉
に迷っているようだったフレンを横目で見つつユーリは問いかけた。
一瞬フレンは驚いたように目を見開いたが、すぐに真剣な表情に戻った。
「・・・・・・・ルークの話、君はどう思う?」
前置きなくされた問いに一瞬目を丸くしたユーリだったが、
「まあ、普通に考えれば信じられる話じゃねえわな」
どこか他人事のような答え方に、フレンの眉がよる。
責めるような視線をなだめるようにユーリは軽く肩をすくめた。
「正直俺も嘘だろと思った、思いはしたが本当の事なんだろうなとも思う」
「・・・・・・・・」
「見た目の年齢にしては発言や考え方が妙に大人びてたり、それにしては行動が見た目どおりだったり、
どういう環境で育ったんだかしらねえけど、あいつは嘘をつけるタイプじゃねえな」
今日1日で見たルークの行動を思い出したのか、思わず苦笑が浮かぶ。
フレンも似たような事を思ったのか真剣だった顔が少し緩んだ。
「それは僕も思った――――けど」
形のいい眉が悩むような形に下がる。
「まだ幼い事を差し引いたとしても彼の言葉は不可解な点が多すぎる」
フレンはいったんここで言葉を切った。
そしてどこか戸惑うような口調でゆっくりとそれを口にした。
「彼の話はまるで――――――
この世界で生きた事がないかのようだったじゃないか」
感じた事をそのまま口にしたフレンだったが、その言葉に現実感のなさにめまいを感じた。
まるで親が子供に聞かせる御伽噺のようだ。
「この世界で生きた事がないみたい・・・・・・・ね」
ユーリはフレンの口から放たれた言葉を吟味するようにつぶやき、何かを考えるかのように視線を床に
向け、しばしの沈黙の後つぶやく様に言った。
「案外そうかもしれねえな」
どこか確信にも似た物を含んだその口調に、驚いたのはフレンだった。
自分で口にしておいてなんだがユーリがこんな現実味の無い話に同意するとは意外すぎる。
「ユーリ、僕は真面目に話をしているんだ。冗談はよしてくれ」
呆れたようにため息をつきつつ言ってくるフレンに、若干理不尽さを感じつつユーリは肩をすくめた。
「冗談言ってるつもりはねえよ。まあ、自分で言ってて嘘くせえなとは思うけど」
言いながらユーリの頭にルークと出会った時の場景がよみがえる。
満天の星空。
その星空から生まれたかのような突然の光。
その光の中から現れた子供。
ありえない事ばかりが起きたあの夜。
「ルークを拾った時もこの話みたいに、冗談みたいな状況だったしな・・・・・」
「そういえばルークを連れて来たのはユーリだったね」
テッドから聞いた言葉を思い出しながらユーリの言葉の中に気になる単語を見つけて眉をひそめた。
「・・・・・・しかし、冗談みたいな状況というのは?」
「聞いて驚け、流れ星から生まれたんだよ」
流れ星というよりは光の塊からだったが―――――
ルークinヴェスペリア第20話をお送りしました。
本当はもっと続くんですけど長くなるのでここで切らせて貰います。
ルークに対することでの二人の考え方というかスタンス?のようなものが決まる話ですね。
しかし、話数が20の大台に乗ったのにまだ1日が終わりません・・・・・・
進行が遅くてすみません(汗)
続きはのんびり待ってください。
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