*19話*
















それが鳴り響いたのは3人の気が緩んだ時だった。



ぐうううううううううう



この部屋に響くのは本日2度目となるその音が一体何の音か分からなかったユーリ達は顔を見合わせ

て首をかしげ、床でじっとしていたラピードはえらく聞き覚えのある音に微妙そうな顔をして音源を

見つめ、その音の発生元であるルークはあわてて腹を押さえた。



「・・・何の音だ?」

「すごい音だったね」



「・・・・・・・・・」



眉をひそめるユーリの横で顔を真っ赤にして黙り込んでいるルークに気付いたフレンは、どうしたの

だろうとその顔を覗き込んだ。



「ルーク?」



問いかけるように名前を呼びながら視線を合わそうとするが、合う前に高速で目を逸らされた。

その反応に自分が何かしただろうかとフレンが首をかしげる。

二人のやり取りを横目で見ていたユーリは今鳴った音の正体に気付いた。

そして一切目を合わそうとしないルークの反応に納得がいって成る程と思う。



「・・・・・今のはお前の腹の音か?」



質問というよりは確認といった方がいいような問いに、ルークは顔を真っ赤にさせながら無言で頷く。



(ううう、何でこういうタイミングで鳴るんだよ俺の腹。ありえねえんだけど)



あまりの恥ずかしさに顔が上げられない。

その反応でルークの心境を察したのかユーリとフレンは思わず苦笑した。



「そんなに恥ずかしがることはないさ。そろそろ夕食時だし、時間に狂いはない。

健康な証拠でいいじゃないか」

「そうそう、自然な事なんだから気にすんな」



さわやかな笑顔で言うフレンに同調するように頷くと、ユーリはにやっと人の悪い笑みを浮かべた。



「しっかし、すごい音だったよな。一体どこの怪獣が唸ってるのかと思ったぞ」



完全にからかう気満々な口調のユーリに対抗するように、ルークは目元に赤みを残しながらも憤慨

したように目元を吊り上げた。



「うるさいな。好きで出したんじゃねえよ!

仕方ないだろ、朝からリンゴしか食べてねえんだから」



噛み付くように言い放つそれはいわゆる逆切れというものではあったが、言い放たれた方は逆切れ

されたことよりもその内容に驚いた。



「リンゴだけ・・・・・」

「・・・・・・・そういや食事を渡した覚えがないな」



ルークが目覚めてから今までの事を一瞬の内に回想したユーリは、腹が鳴っても仕方がない状況に

ルークの腹が今まで良く持ったものだと驚き感心した。



「水路に落ちたのは自分のせいだったけど、今の今までそれどころじゃなかったし・・・・」



ユーリが右斜め上の方向に思考をやっているとは露知らず、ルークは目が覚めてから今までを思っ

て遠い目をして肩を落とした。

一体自分は別の世界に来て何やってまで何やってるんだろう。

なんか迷惑ばかりかけている気がする。

気付かないうちにため息までついていたルークをじっと見ていたフレンだったが、なにやら思いつ

いたことがあったらしく、大きくうなずくと、



「よし!今日の夕食は僕が作るよ。腕によりをかけて作るから楽しみにしてくれ」



と、輝かんばかりの笑顔でそう宣言した。

それに慌てたのはユーリである。



「止せフレン!!!お前に作らせるくらいだったら俺が作る!!!!」



ものすごい剣幕で叫んだユーリだったが、



「?・・・何をそんなに慌てているんだいユーリ。僕の体力を心配して言ってくれているんだった

らいらぬ心配だよ。

そんなに動き回ってないし、むしろ僕よりユーリの方が疲れているんじゃないか?

下町中走り回っていたって聞いたよ。僕の事は気にせずゆっくり休んでてくれ」



自分が懸念しているのとは180度違う方向のフレンの答えに、何で俺の言いたいことが伝わらねえん

だよと、思いっきり髪を掻き毟りたい衝動に駆られた。

今までもこの話題で理解されたことは一度としてないが・・・・。

それでもここで会話を放棄すると後が怖いので、何とか思いとどまらせようと頑張ってみる。



「そうじゃねえっ、お前が作るとシャレになんねえんだよ!!

俺を殺す気か!?」

「大丈夫だって、全くユーリは大げさすぎるよ。料理だけで人を殺せるわけないじゃないか」

「確かにまだ死人は出てねえけど、それに似たようなことが今まで何度もあったろうがっ」

「あれはたまたま食材が傷んでたからだろう。今度はちゃんと確認してから作るから大丈夫だって」

「大丈夫じゃねえから止めてんだろうが!!」



始まった時から平行線をたどる会話を困ったような顔で二人の会話を聞きながら、ルークは微妙なデ

ジャヴを感じていた。

目の前の光景はまるでナタリアが自分の作った料理を仲間に食べさせようとしているときに良く見ら

れる光景にそっくりだった。

料理前と料理後の違いはあったが、このままでは前が後に変わるのも時間の問題だろう。

それにしてもフレンって料理が下手なのか・・・・・・・意外だ。





「二人ともそのくらいにしておきなよ」



放って置いたらいつまでも続いていそうな二人の押し問答にピリオドを打つようにルークが割っては

いると、すごい勢いで二人の顔がルークに向けられる。

言い合っているうちに興奮してきていたのか、予想以上に鋭い二人の目つきにルークは無意識の内に

一歩後退った。



「ルーク、このわからずやに一言言ってやってくれ」

「え・・・・ちょ・・・・・一言って・・・・?」

「ルーク、ユーリの言うことなんて聞くことなんてないよ。おいしい夕食を作ってあげるから待って

いてくれ」

「え・・・・・・・・・・」

「だから、お前に包丁握らせるくらいなら、ラピードに作らせた方がましだって言ってんだろう!」

「言うに事欠いてそういう事言うのか君は!!」



腹立たしげな表情そのままに言ってくるユーリと、表面はにこやかでも目の奥が笑ってないフレンに

詰め寄られ返答に窮していると、割って入ったかいも無く二人は元の言い合いに戻っていった。

けんかするほど仲が良いとはよく言ったものだが、ちょっと迷惑である。

ユーリの反応を見るにフレンの主張を受け入れるのはかなり危険そうだったのだが、ユーリが自分の

料理下手に全く気付いていないフレンの説得を終えるのを待っていたらお腹と背中がくっつきそうだ

ったので、ルークは仕方なしに部屋を見回した。

その視線が机に山と積まれたもらい物で止まる。

そういえば食べ物もいっぱい貰ってたっけ。

仕分けの際により分けた品々を思い浮かべて、ユーリとフレンを止める言葉は決まった。



「フレン。料理は作ってくれなくても良いよ」



お互いに言い合っている状況で、はたして聞こえるのかは不安だったが、ちゃんと聞こえたらしく、

止むことの無かった口論が止まる。



「作ってくれようとするフレンの気持ちはうれしいけど、貰ったものを食べたほうが良いんじゃない

か。日持ちしない物もあったと思うし、食べないで腐らせるのも悪いだろ?」

「でも――――」

「そうだぞフレン!!!」



ルークの言葉にまだ納得できなかったようで、言葉を返そうとするフレンにかぶせるようにして、ユ

ーリが声を上げる。



「貰った物は貰ったその日に食べねえと、くれたやつらに悪いじゃねえか」

「・・・・・ユーリが言うと嘘臭く聞こえるよ。でもそうだね―――――――」



いつもだったら絶対言わなさそうな言葉にフレンは眉を寄せたが、その主張は納得がいくものだった

ようですぐに表情を元に戻して頷くと、



「貰ったものがあるのにこれ以上作る必要はないか」



ちょっと残念そうに言うフレンの横でユーリがほっとしたように大きく安堵のため息をついた。

そんなユーリの様子にルークはこの先何があってもフレンに料理をさせるのだけは止めておこうと強く

心に誓ったのだった。











ルークinヴェスペリア第19話をお送りしました。

シリアスが続いたので少しは明るい話を、と入れたのですがなんか別人注意報が流れてます。
先日届いた劇場版を見てたせいか、ユーリ達のやり取りが大人気無さ満載です。
プロットの段階ではこんなに激しい口論ではなかったのですが、書き始めたら脱線して二人の言い合いの激し
さが増しました。
やっぱり劇場版を見ながら書くべきではなかったか・・・・・・・・・・切り所が分からなくて困りましたよ。
ルークがご飯を食べたかのくだりで、ユーリも食べてないじゃん!ということに気付いたのですが、本人が気
付いていないようなのでスルーしてます。
フレンの料理に危機感を抱いていますけど、ルークも人の事が言えないと思うのは私だけでしょうかね・・・・・・


続きはのんびり待ってください。








Top ☆ back