*9話*
「ルークッ!大丈夫か?」
「うん・・・何とか」
ルークまで辿り着き離されないように荷物を掴みユーリが声をかけると、ようやくユーリの
存在に気付いたのか、ルークはうつむいていた顔を上げ弱々しい笑顔を浮かべた。
体が冷えて体力を奪われているせいか声にハリはなかったものの、ちゃんと言葉を返してき
たルークにとりあえず最悪な事態まではいっていない事にユーリは安堵のため息をつく。
「返事が出来るようなら、まだ大丈夫だな。すぐに水から出してやるからもう少しだけ
頑張れよ」
そう言ってユーリは励ますようににかっと笑うと、荷物を掴んでいない方の手でルークを抱
え込み、水底を蹴って岸の方へと少しずつ確実に近づいていく。
今までルークがもがいていた時間の何十倍も早い速度で岸に辿り着いた。
先にルークを岸にあげる為に、一緒に岸まで引っ張ってきていた荷物を持つ手を離そうとし
たユーリの目の前に、見覚えのある手が差し出された。
はじかれたように視線を上げると、そこにはフレンとラピードの姿があった。
「また随分と都合のいいタイミングで現れるな」
「何か不満でも?」
「い〜や、むしろ好都合だよ。ルークを頼む」
「分かった」
軽いやり取りの後、ユーリはフレンが持ち上げやすいように、抱え込んでいたルークを岸に
押しやる。
膝をつきしゃがみ込んだフレンの手がルークの両脇に差し入れられ、ルークは一気に水から
引き上げられた。
すぐに地面に下ろされたが、膝に力が入らなくて座り込んでしまう。
「大丈夫かい?だいぶ体が冷えてるから、すぐに服を着替えて体を温めたほうがいい」
心配そうに声をかけながらフレンはマントをはずしてルークに巻きつけた。
「とりあえず俺ん所に連れて帰るか。引き上げた荷物は・・・・・・しゃあねえから連れ帰
る途中であった奴に押し付けるか」
フレンがルークを引き上げている間に荷物と共に水から上がっていたユーリは、濡れて張り
付く髪を鬱陶しそうに払い、引き上げた荷物を片手にルークの正面にやってきた。
ルークの冷えた体を少しでも温めようと背中をさすっているフレンの脇にしゃがみ込み、
覗き込んだルークの顔色の悪さに眉をしかめる。
「部屋に着いたら女将さんに何か暖かいものを用意してもらうか・・・・」
そう言いながら外傷はないか視線を走らせていたユーリは、先程からルークの反応が全くない
事に気が付いた。
不思議に思って顔を上げると、ぽかんと口開けたままルークが固まっているのが見えた。
表情から察するに、とても驚愕しているということは分かったが、何に対してそんなに驚愕
しているのかとその視線を追ってみると、その先には生真面目な幼馴染の姿があった。
「・・・・・フレンはそんなに驚くほど顔の持ち主じゃねえと思うんだけどな」
ルークが驚愕しているものの正体は分かったが、驚愕するほどのものを見つけることが出来
なかったユーリは、ルークと同じようにフレンの顔を見ながら言った。
面白みのないし、何の変哲もない顔にしか見えねえ・・・・・
と、心の中で呟いたユーリに気付いたわけではないのだろうが、フレンが咎めるような視線
を送ってきた。
それにユーリが肩をすくめたとき、
「フレン・・・・・?」
「ん?こいつの名前に興味があるのか?」
口を開けたまま固まっていたルークが、どこか戸惑ったようなしかし何かに納得したかのよ
うにフレンの名前を呟いたのが聞こえて、ユーリは視線をルークに向けた。
問い掛けられたルークは慌てたように謎の動きをして、それを誤魔化すように苦笑いを浮かべた。
「興味があるというか、色々衝撃を受けたというか・・・・・・ちょっとね」
言葉を濁したルークの何か色々ありそうな答えに、さらに問いを重ねようと口を開いたユーリ
だったが、触れた体の冷たさに暖を取るほうが先と何も言わずに口を閉じた。
後で問いただすかと心の中で呟きつつ上着を脱ぎ、既に巻きつけられていたフレンのマント
の上に重ねると何の言葉もかけずにルークを抱き上げ、下宿している宿の方へと歩き出す。
それに驚いたのはルークである。
道端に倒れている所を拾って看病してもらったうえに先程の水路からの救出、迷惑をかけっぱ
なしなのに、これ以上面倒をかけるわけにはいかないと、下ろしてくれるように説得を試みたのだが、
ユーリの答えは。
「駄目だ。抱き上げられるのが嫌だって言うんだったら、後は引き摺るしか方法はねえな」
と、にべもない。
本当にするつもりはないのだろうが、言っているユーリの顔をみていると本当にやりそうに
見えてくるから不思議だ。
「引き摺るって・・・・自分で歩けるよ」
それでもユーリに負担はかけたくない一心で渋るルークに、横を歩くフレンが声をかけてきた。
「体が冷えてうまく動かないだろうから、甘えてしまった方がいい。ふらついてまた水路に
落ちてしまったら大変だろう?」
「そうそう、水遊びなんてそうしょっちゅうするもんじゃないぜ。俺はもうさっき飛び込ん
だから、もう水遊びは勘弁だぜ」
「・・・・・・・ユーリ」
ルークが気にしないようにと、フォローを入れたフレンの言葉にかぶせるように、皮肉を
言ってくる。
彼なりにルークを気にしての言葉なのだろうが、フレンのフォローが台無しである。
その言葉に撃沈したルークを見て、フレンが非難するような視線を送ってくる。
足を尻尾のようなもので叩かれる感触があって視線を下ろすと、水路から引き上げた荷物を
咥えて先導するように歩いていたラピードがいつのまにか足元に来ていて、呆れたような顔
をして見上げていた。
ルークinヴェスペリア第9話をお送りしました。
長くなりそうだったんでここできります。中途半端なところで終わってて
すみません。
ルー君ようやく水から脱出して陸の上に帰還しました。
フレンの顔を見てルークが驚いているのは、ガイとフレンを見た人なら絶
対思うであろうあれです。
続きはのんびり待ってください。
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