*7話*














時折顔を撫でる風は暖かいが水温はそこまで暖かくはなく、流れる水はルークから

どんどん体温を奪ってゆく。

足は先程からばたつかせて動いているからまだ大丈夫なのだが、荷物を掴んだまま

の手は水の冷たさでうまく動かない。

ぷりんとした唇は健康的とはいえない紫色に染まり、その間から噛み合わない歯の

こすれる音がもれる。

どんどん冷えていく体にルークは若干の危機感を感じていた。

水路に落ちてから何度も岸に上がろうと頑張っているのだが、その試みは今の所全

て失敗に終わっている。

自分の力で上がることが出来ないのなら、通り掛かりの親切な人に助けを求めよう

と思っても、見える範囲に人の姿が見えることはなく、その試みは心の中だけに

留まっている。

ルークが流されている間ずっと横を平走しているラピードは、誰かを呼ぶように先

程からずっと吠えつづけている。

現状から抜け出す手段は今の所ない。

ルークは途方にくれていた。























風になびく金髪。

オレンジの甲冑に身を包んだ青年―――フレンは、下町へと至る坂道を歩いていた。

久しぶりに丸一日休暇が取れたので様子を見に帰ってきたのだが、下町の様子がい

つもと違う事に眉をひそめた。

また何かあったのだろうか。

騎士団との揉め事ならばすぐに、誰かしらが自分の所に連絡をよこすはずだし、何

か深刻な事件が起こった場合でもやはり誰かしら連絡をよこすだろう。

それらが来ていないという事はそれほど大事というわけではないのだろうが、下町

に近付いていくにつれて感じる騒がしさや緊迫感は、何か事件があったという

ことを感じさせるには十分すぎるほどであった。

知らず知らずの内に坂道を下る足は駆け足に近い速さになっていた。

坂道を下りきって見えた広場にはたくさんの荷物が置かれ、それらを纏めるのを手

伝っているのか、見知った顔がそこかしこに見えた。

しかし、荷物の量に比べて手伝っている人数が少ないように思えた。

それに、こんな時ほど見かける幼馴染の顔が見えないことで、フレンは何かあった

のだと確信した。



「あ、フレン!いつ戻ってきたんだよ」



広場を見て眉をしかめていたフレンは、横から声をかけられて難しそうな顔を崩し

て振り返った。



「やあ、テッド。今しがた来たばかりだよ。それにしても・・・」



振り返った先にいたテッドに、にこやかな顔をして挨拶をした後、フレンは広場を

見回して再び眉をしかめて、



「何があったんだい?広場の様子にしても、みんな緊迫しているようだけど」

「ちょっと騎士団ともめちゃって」

「もめた?」



自分の所にこなかった時点で大事になってないのだろうが、それでも思わず訊き返

してしまう。



「ちょっとね。それはすぐに収まったんだけど、その時に荷物が崩れて水路に落ち

ちゃったんだよ。皆で回収して今終わった所」

「終わったにしては、みんな顔が硬いみたいだけど?」



テッドの説明を聞いて事情は何となく分かったが、言葉の通りならもう少し雰囲気

は和気あいあいとしているだろう。



「ルークがいなくなっちゃったんだよ」

「ルーク?」



知らない名前に首をかしげる。



「昨日ユーリが拾ってきた子で、さっき目を覚ましたんだけどいなくなっちゃったんだよ。

それでユーリに話したらルークに何かあったかもって、走ってどこかいっちゃったし」

「それでみんな緊迫してるのか」

「うん。まだ小さい子だし、水路に落ちてたら大変だからって、手の空いてる人たち

で探してるんだよ」

「そうか・・・・」



ようやく全ての事情が飲み込めて、フレンは手に持っていた紙袋をテッドに渡す。



「?フレン?」

「女将さんに渡しといてくれ。頼まれてた物だっていえば分かると思うから。僕は

みんなと一緒にルークっていう子を探すよ。どんな子なんだい?」

「朱毛に緑色の目をした7歳くらいの男の子だよ」

「朱毛の男の子だね、わかった」



捜し人の特徴を訊いてフレンはテッドに礼を言うと、歩き出した。














ルークinヴェスペリア第7話をお送りしました。
彼はいつになったら陸に上がれるのか・・・ルークの川流れ、未だに続いております。
ユリルクを目指しているはずなのに、ユーリの姿がありません。
影の形もありません。糖度もゼロです。
ユーリの代わりにフレンの登場です。
もっと後に登場予定だったはずなのに、何故か出て来てます。
そしてやっぱり偽者臭が凄いです。
書いてて泣きそうになるくらいフレンのキャラがさっぱり分かりません。
今回話が短いのはそのせいかって・・・・・・・・・・・・気のせいです、きっと


続きはのんびり待ってください。











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