*6話*
俺について来いとばかりに荷物があるであろう方角へと、走り出したラピードの後を
追って、ルークも走り出す。
一緒に走っていると、すぐに流れる水の中に見覚えのある荷物が見えた。
「あった!」
嬉しさのあまり思わず叫ぶと、走るスピードを上げる。
すぐに追いつき流れる荷物の横を走りながら、どこかで引き上げられないかと周りを
見ると、もう少し行った所に橋があるのが見えた。
高さのある橋ではなく、荷物を引き上げるには絶好の場所だろう。
流れる荷物を追い越して、橋に向かって全力で走る。
橋に着くと引き上げやすいように、水路を覗き込むように身を乗り出すと、そのまま
の体勢で荷物が来るのを待った。
「バウバウッ!!」
荷物が橋に近づいてきたのか、ラピードの声が聞こえる。
橋の下から荷物が顔を出した。
手元を通過しきる前にそれをわし掴むと、勢いよく橋の上に引き上げようとした。
しかし――――――――
引き上げられて後ろに行くはずの体重は、ルークの予想を裏切り、前へと落ちてゆく。
あまりに出来事に、声も出ないまま視界いっぱいに水面が広がり、
そして・・・・
水路に派手な水飛沫が上がった。
落ちてゆくルークを、慌ててラピードが咥えようとしたが、すんでの所で間に合わな
かった。
荷物の方がルークよりも重かったせいなのか、以前の体と縮んでしまった今の体との
筋力の差を分かっていなかったせいなのか、掴んだ荷物はわずかに持ち上がっただけで、
それ以上持ち上がらず、反対に水の勢いに乗った荷物に引きずられて、
ルーク方が水路へと落ちてしまった。
水路に落ちたルークは、思っても見なかった事態に、気が動転して溺れそうになる。
鼻や口に入り込んで来る水に、無我夢中で掴んだままだった荷物にしがみつく。
荷物の浮力が強かったのか、ルークがしがみついても荷物は沈む事もなく浮かんだまま
流れていく。
助かったと安堵のため息をついたルークだったが、ここで困った事態に直面した。
足がつかないのである。
水路を見た感じでは水位はあるが、足はつくだろうと思ったのだが、予想に反して
いくら足を伸ばしても何も触れるものはない。
自分の身長が縮んでしまったのだという実感が、今更ながらにわいてきてなんだか
悲しい気分になってくる。
少し黄昏てしまいたくなるルークであったが、このまま流され続けているという選択
肢などあるわけもなく、足がつかないながらもなんとか岸に寄せられないものかと、
足をばたつかせてみる―――が、バタ足のやり方が下手なのか、進む速度は
遅くいっこうに近づけない。
橋から落ちたルークを咥え損ねたラピードは、流されていくルークの横を平走しなが
ら、周りを見て誰も近くにいない現状がわかると、誰かを呼ぶように大音量で吠え始めた。
その声はさほど広くはない路地いっぱいに響いた。
「・・・・・・ふう。けっこう回収できたな。見つけられてないヤツは後いくつだ?」
引き上げてきた荷物を広場の一角に置いて、ユーリはため息をついた。
先程から荷物を引き上げるという屈伸運動を繰り返していたせいか痛む腰をさすりつつ、
ユーリは広場に置かれた荷物群を見まわした。
広場の端で持ち主のカンドックと回収作業を手伝っていた下町の人達が、全部回収で
きたかどうか確認作業をしている。
大方回収できたみたいだし、そろそろルークの所に戻るか。
と、ラピードと一緒に部屋において来た朱毛の少年の事を思いながら水路を見ていると、
遠くから犬の鳴声がかすかに聞こえた。
それに合わせたわけではないのだろうが、向こうの路地からテッドが走ってくるの
が見えた。
「・・・・・なんかあったのか?」
よほど慌てているのか、何度も躓きそうになりながら、一直線にこちらに向かって走って
くるテッドと響いてくる犬の鳴声に、ユーリは嫌な予感を感じていた。
「ユ〜リ〜〜〜っ!」
「どうしたテッド?また何かあったのか?」
「大変なんだ。ルークがいなくなったって」
「!?」
テッドの言葉にユーリの表情が変わった。
「いなくなったって、ラピードもか?」
「うん」
テッドの返事に、ユーリははじかれたように走り出した。
「え?!ちょっと・・・・ユーリっ??!!」
「ルークに何かあったかもしれねえ。俺はラピードを探すから、テッドはカンドック
に事情を話しといてくれ」
急に走り出したユーリに驚きながらも追いすがるテッドに、足を止める事もせずユーリ
は手短に用件を頼むと、返事を返す暇もなく速度を上げて路地の向こうに
消えてしまった。
慌てていたのは自分の方だったが、ユーリの走り去りっぷりに驚き、足を止めてしまった
テッドの耳にも遠くに響く鳴声がとどいた。
「・・・・・・・ラピード?」
いつもはしない盛大な吠え方に、テッドの胸に先程ユーリが感じたものと同種の嫌な予感がよぎる。
それを振り払うかのように勢いよく頭を振ると、テッドはユーリがいなくなったことを
カンドックに伝えようと、広場を見回したのだった。
ルークinヴェスペリア第6話をお送りしました。
ルークが自分の体の変化に気づく回です。
10歳の差ってでかいです。
17歳の体のつもりで行動しても7歳の体だとできない事っていっぱいあると思うんですよ。
水路に落ちたのは、ユーリ過保護計画に向けての一石です。
第2のガイを目指してます。
まあ、ユーリの場合過保護になっても、手を放すべき所ではちゃんと手を放しそうな
気もしますけどね。
その代わり内心心配の嵐だったりして、やってる事や言う内容がお母さんみたいだと
かなり笑える(主に私が)
続きはのんびり待ってください。
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