*5話*
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
お互い無言のまま見つめあう。
間の抜けた音の音源はルークの腹なのだが、恥ずかしいのかルークはそ知らぬ顔を通す。
しかし――――――
ぐうううううううううう
悲痛ささえも感じさせるように、再び腹の虫が空腹を訴える。
ルークの顔が瞬間沸騰機のように赤面し、慌てて自分の腹を押さえた。
そして、少し情けなさそうにラピードを見て、
「・・・・・お腹空いた」
ぽつりと自分の現状を報告する。
犬に何を訴えているんだかと、少し情けなくなる。
しかし、腹は遠慮なくグウグウ、腹がへったと主張をくり返し、いたたまれない。
あまりの情けなさに、ルークが半泣きになりかけた頃、ラピードが部屋の隅からベッド
まで移動してきて、ルークのズボンの裾を引っぱった。
「え・・・な、何?」
引っぱられてずり落ちそうになるズボンを押えて、ルークは戸惑いの声を上げる。
「ちょっ、引っぱらないでくれよ。ズボンが脱げちまう」
ルークが必死に静止の言葉をかけても、一向に引っぱる事を止める様子はない。
心底困りきってしまった時、ふとあることに気付いた。
もしかして―――――
「こっちに来いって事?」
気付いた事を口にすると、ラピードはズボンから口を放し、ルークの言葉を肯定する
ように、「バウッ」と鳴いて、テーブルの方に歩いて行く。
先導するようにピンと立つラピードの尻尾を見つつ、その後を追うようにルークも
テーブルに向かう。
丁度目線の高さにあるテーブルの上に、紙袋が乗っているのが見えた。
なんだろうと、椅子によじ登って覗いて見ると、中に入っていたのは、真っ赤に熟れた
美味しそうなリンゴだった。
食欲をそそる赤に、ルークの腹が再びグウウとなった。
食べ物を目の前にしていよいよ耐えられなくなったらしく、先程よりも盛大に鳴り響く。
「・・・・・・・」
かなり恥ずかしい。
しかし、人の家の物を勝手に食べるわけにも行かないし、ユーリが帰ってくるまで待つ
しかないか・・・・・・。
そう結論づけると、ルークは誘惑溢れる林檎から目をそらし椅子から降りようとするが、
ラピードが邪魔をして降りる事が出来ない。
「ええ、と・・・・ラピー・・ド?・・・だっけ?
椅子から降りたいから、そこ避けてくれないか?」
ユーリが呼んでいた名前を戸惑いつつ口にして、お願いしてみる。
しかし、ラピードはいっこうに避けてくれる気配は無い。
名前を間違えているわけじゃないよな・・・・さっきユーリが呼んでたし。
困ってしまったルークが、何とはなしに林檎の入っている紙袋に視線を移した時、
「バウッ!」
まるで林檎を意識しろとでも言いたいようなタイミングでラピードが吠えた。
「・・・・・食べろって、言いたいのか?」
「くぅ〜ん」
「勝手に食べるなんて出来ないよ。俺のじゃなくて、ユーリのなんだから」
「ウウウッ、ガウガウッ!!!」
ルークがそう言うと、さっさと食えといわんばかりに吠えられた。
「分かった、分かったよ。食べればいいんだろ、食べれば!」
観念したように言うルークに、ラピードは満足そうに鼻を鳴らした。
「後で怒られたらラピードのせいだからな・・・・」
うなだれながら諦めたようにため息をつき、林檎を手に取る。
表面を服の裾で軽く拭いた後、大口を開けてかじりつく。
口に広がる林檎の甘酸っぱい果汁。
空腹だった体に染み渡っていくようだ。
「ラピードも食うか?」
そうルークが声をかけた時には、ラピードの姿はテーブルの近くにはなく、用が済んだ
とばかりにもとの位置で丸くなっていた。
優しいんだろうが、愛想のない犬である。
しかし、そんなでも自分を気遣ってくれたのだと分かったルークは、嬉しそうに笑顔を
浮かべて林檎にかじりついた。
半分くらいまで林檎を食べた後ベッド上に戻ろうと視線をベッドにやった時、置いたまま
にしていたローレライの鍵がなくなっている事に気付いた。
「!!?」
齧りかけの林檎をテーブルにおいて、慌ててベッドに駆け寄る。
シーツの上にはない。
しゃがみ込んでベッドの下も見るが、落ちている様子はない。
現れた時と同じように――光ったりはしていないが――前触れもなく忽然と消えていた。
何でないんだ!??
混乱してくる頭を冷やそうと窓の外に視線をやった時、水路を一抱えほどの荷物が流れて
いくのが見えた。
「・・・・・・・・・あれって・・・・・・」
先程のユーリとテッドの会話を思い出す。
あれもしかして、カンドックさんが落とした荷物の一つだったりしないよな。
違うかもしれないがもしそうだったらと思うと、居ても立ってもいられずにルークは
はじかれたように部屋の出口に向かい、外に飛び出した。
ルークの後を寄り添うようにラピードが追う。
そして二人は階段を駆け下り、水路に向かった。
「ない・・・・」
部屋から出る間に結構流されていってしまったのか、影も形も見当たらない荷物に、
ルークは肩を落とした。
姿は見えなくても諦めきれなくて水路を見渡した時、服の裾を引っ張られるのを感じた。
視線をやると、こっちだというように下流の方に引っぱるラピードの姿があった。
何故ルークが部屋を出たのか分かっているらしく、ルークの視線が自分に向いたのを確認
すると、下流の方角に走り出した。
ルークinヴェスペリア第5話をお送りしました。
ぎこちないながらも、何とか通じ合う子供と犬、書いててほんわかした気分になります。
今回ずっとラピードのターン。
ユリルクもいいけどラピルクもいいよね。むしろルークが右側だったらなんでもいけそう
な気がする、今日この頃。
・・・・・・色々終わっちゃってる気もするけど、ノープロブレム。
我が人生に一片の悔いや無し(←胸はって言う事か)
続きはのんびり待ってください。
← →
Top ☆ back