*3話*
「ところで、お前これからどうすんだ?」
「え?」
ようやくルークの怒りが収まり、お互いに落ち着いた頃合いを見て、ユーリは訊いてくる。
突然ふられた話題に、ついていけなかったのか、ルークは間の抜けた返事を返した。
「え? じゃねえよ。何で路地裏で倒れたかは訊かねえけど、その服装を見る限り、あんたお貴族様の
お坊ちゃんだろ?どんな事情があるにしろこれからどうするのかくらいは決めといたほうが
いいじゃねえの」
「ああ、そういう事・・・・・」
付け加えられた言葉でようやく相手の訊きたい事がわかったのか、どこかホッとしたような
顔をする。
それから、すいっと視線を窓の外に向けてしばし考えた後、何かに気付いたような顔をして、
ユーリのほうに視線を戻し、
「そういえば訊いてなかったけど、ここってどこなんだ?ケセドニアにもグランコクマにも
バチカルにも見えないけど」
ずっと感じていた疑問を口にする。
仲間達と世界中を巡って、常人より地理には詳しくなっているはずなのだが、窓から見える
景色に見覚えのある物は何1つなかった。
「ケセドニア?聞いた事ない地名だな。ここは帝都ザーフィアス・・・・・貴族なのに帝都をしらないのか?」
「帝都・・・ザーフィアス? ・・・・・ここはマルクト?それともキムラスカなのか?」
「は?マルクト?キムラスカってなんだよ」
聞いた事のない名前に、訊き返したルークだったが、返ってきたのは人が意味不明なことを
いわれた時に、人が浮かべる表情のそれだった。
マルクトやキムラスカを知らない?
世界に生きていてマルクトやキムラスカを知らないでいる事なんて出来るのか?
国の名前を知らないなんてかつての自分のような筋金入りの世間知らずか、相当根性の入った
世捨て人ぐらいだろう。こんな街中で世捨て人は無いとしても・・・・
なんだか頭が混乱してきた。
「え・・・・知ら・・ないのか?・・・・・国の名前・・だよ?」
驚きすぎて頭が回らないながらも、なんとか言葉が口を出る。
「国? 帝国以外に国なんて聞いた事ないぜ?」
相手が混乱しているのは手に取るように分かったが、ユーリもそれを気遣うことは出来なかった。
相手の言っている事が理解できない。
この子供は一体何を言っているのだろう。
理解の出来ない会話に同じように混乱し始めていたユーリに追い討ちをかけるように、
ルークはさらに意味不明なことを言う。
「ええ!?オールドラントに帝国なんて国あったっけ?」
「オールドラントって、ここはテルカ・リュミレースだぜ」
「は?」
返されたユーリの言葉に、ルークは驚愕で開かれていた目をさらに見開いた。
止めを刺すようなその言葉は、ルークの頭を完全にフリーズさせた。
ユーリはなんていった?
テルカ・リュミレースだって?
何処だよそれ、聞いた事ないぞ。
自分の置かれた状況が分からない。
言われた言葉がよほど衝撃だったのか、固まってしまったルークを見て、ユーリは考え込む。
決定的な何かずれている気がする。
そうでなくてはここまで話が合わないなんて事があるわけない。
とりあえず、固まってしまったルークをこっちに呼び戻さなければ。
そう思い、ルークの肩に手をかけた時、それは起こった。
ルークの胸が急に光りだしたのだ。
「えっ!!!な、何!?」
自分の身におきた変化で、現実に引き戻されたのか目に光が戻った。
が、今度は何がおきたのかわからずに慌てふためいている。
ユーリもまた何が起きたのか分からず、驚いた表情のまま光っているルークの胸を見つめていた。
ルークの胸から溢れ出した光は段々と強まり、やがて1つの形を作り始める。
「え?」
光が見覚えのある物に変わっていく事に、ルークは戸惑いの声を上げた。
光はある程度の長さの細長い棒になったと思うと、音叉のような形をした剣へと形を変えてゆく。
「・・・・・・・剣?」
剣にしてはおかしな形状をしているそれに、ユーリは眉をひそめる。
最終的な形に落ち着いたのか、胸や剣からは溢れていた光が段々と収まっていく。
「ローレライの鍵だ・・・・・なんで・・・・・・・」
ルークは自分の胸から出てきたまま中空で浮いている剣に、震える手を伸ばした。
ルークinヴェスペリア第3話をお送りしました。
ようやくトリップしている感が出せた気がします。
ルークは世界を旅したわけですから、普通の人より地名とか詳しそうですよね。
異世界だから自分の知っている地名があるわけもないし、常識も相手に通じない。
だから会話がかみ合わないと言う事が起きると思うんですよ。
しかもまだルークはトリップした事実に気付いてないですしね。
どうやって気付かせるかがこれからの課題です。
続きはのんびり待ってください。
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