*出会い(シュヴァーンVer.)*
(ゲーム本編前です。連載しているものとは設定が異なりますのでご注意ください
突然始まって突然終わります)
1.
カリカリとペン先が紙の上を滑る音が響く室内。
積み上げられた書類の山が魔導器<ブラスティア>の明りに照らされてぼんやりと
浮かび上がっている。
特殊任務の為に溜まりに溜まった書類を処理しているのだが、量が量だけに作業
を始めた時にはまだ空の一番高い所にあった太陽も地平線の彼方へといなくなり、
代わりに「凛々の明星」が一際強く輝いている。
それだけの時間が経ったにもかかわらず、目の前の山が消える気配は一向に無い。
淡い魔導器<ブラスティア>の明りの元で細かい文字を追っていた目が疲労からか
僅かに痛んだ。
視界がかすみ始めたのをきにシュヴァーンはずっと握りっぱなしだったペンを置き、
酷使し続けた目を押さえた。
休憩に入ったと判断したのか、近くの長椅子にずっと座っていた青年が立ち上がる
気配を感じてシュヴァーンは閉じた目を開き肩越しに振り返ると、まるで雛のよ
うな朱色の頭をしたその青年が、覚束ない足取りで部屋の隅に置かれた茶器に手
を伸ばしている所だった。
彼が何をしようとしているのかを察したシュヴァーンは椅子を引いて静かに立ちあが
る。
「そのまま座っててくれよ。お茶を入れるぐらいだったら俺にも出来るからさ」
立ち上がる音が聞こえたのか青年は振り返り、へにゃと音がしそうな笑顔を浮かべ
た。
言いながら持ち上げた茶器は、上手く手に力が入っていないためかカタカタと音を立
てて震え、今にも落ちてしまいそうでどうにも心臓に悪い。
シュヴァーンは思わずついてしまいそうになるため息を殺しつつ茶器を持って移動し
ようと四苦八苦している青年に近寄ると無言で茶器を奪い取った。
「茶を入れる前に茶器が割れてしまっては元も子もあるまい」
茶器を奪い取ると同時に単調にも聞こえる口調で言われた言葉に、青年はそんなこ
と無いと言い返そうとしたのだろう、ムッとした表情をして口を開いた所でシュヴァーン
は言葉を続けた。
「体が上手く動かないのに無理をするな」
やはりぶっきらぼうな口調ではあったが、声に含まれた気遣いに気付いて青年はうれ
しそうに笑うと、茶器を持ったまま部屋の中で唯一書類の詰まれていない長椅子のサ
イドテーブルに向かっていくシュヴァーンの後を追いかけた。
目の前で湯気を上げながら注がれる紅茶を眺めつつ、シュヴァーンはこの朱毛の青年と
出会った時の事を思い出していた。
2.
あれは隊を率いて魔物の掃討作戦を実行しているときのことだった。
てんでバラバラに動いていた魔物達が何かに反応するように急に群れを形成しはじめ
たのだ。
シュヴァーンの脳裏に人魔戦争の光景がよぎる。
無意識の内に表情が厳しいものへと変わった。
片手を部下に見えるように上げて合図を送ると、彼の意思を察した小隊長達が部下た
ちに号令をかける。
魔物によってバラバラに散っていた騎士たちが号令の通りに隊列を組みなおす。
その様子を視界の隅で確認しつつ、シュヴァーンはひとつの群れになった魔物の動き
を窺っていた。
こちらに襲い掛かってくるのを見逃すわけには行かない。
隊列が整い再び相当を開始しようと腕を上げた時、群れを形成し始めていた魔物たち
が何かに反応したかのように向きを変えて森の奥へと向かい始めた。
逃げたにしては反応がおかしかった。
その違和感にシュヴァーンが眉をしかめた時、
「シュヴァーン隊長!向こうに民間人が!?」
思考をさえぎるような形で隊員の叫びが聞こえた。
声に反応するように視線を向けると、魔物が向かっていく先には赤毛の青年の姿が
あった。
地べたにしゃがみこみ自分に向かってくる魔物を見つめているその表情は焦燥の色に
染まっていた。
腰が抜けているのだろうか。立ち上がろうとして何度も失敗して座り込んだ体勢のまま
地面に手を付いて魔物をにらみつけている。
何でそんな状態の者がこんな所にいるのか疑問に思いながらも、彼を見捨てるわけに
はいかずシュヴァーンは無言で魔物の後を追う。
剣では明らかに間に合わない距離ではあったが、彼は抜き身の剣を握り走る。
走りながらもう片方の手で握りのレバーをはずした。
金属音と共に剣が弓へと変わるのを手の感覚で感じながら矢筒から矢を引き抜いて構
えると同時に放つ。
ろくに狙えているようには見えなかったが、矢はまっすぐに飛び今まさに青年に喰らい
付こうとしていた魔物の頭を貫いた。
崩れ落ちる魔物を乗り越えて新たな魔物が青年に襲いかかろうとしたが、その時には
シュヴァーンの意図を察した隊員による魔術が炸裂して、青年の周りにちょっとした空
間が生まれる。
付いてしまっていたタイムラグが少し埋まる。
青年のいる位置まではもう少し。
小隊長達が自分に続いていることを横目で確認して手で合図を送った。
並ぶように走っていた小隊長達が自分を追い抜かして魔物の群れに切り込み出来た
道を走りぬけ、青年の目の前までたどり着いた。
3.
ざっと見て青年に大きな怪我がない事を確認すると、シュヴァーンは青年を背に庇うよう
に立ち、握りのレバーを引いて弓を再び剣へと戻す。
変形弓を初めて見たのか青年の目が驚いたように大きく開かれる。
しかしそれも一瞬のことで自分を庇うように目の前に立つシュヴァーンをまっすぐ見つめ
た。
「ありがとう、助かった」
「礼はいらない」
礼を言ってくる青年の声を背中で聞きながら、シュヴァーンは再びこちらに向かってくる
魔物たちから目を離すことなく答えた。
「何故掃討作戦を実行しているこの場所にいたのかは、後で聞かせてもらう必要がある
からな」
淡々とただそれだけを言うと、目の前にまで迫って来ていた魔物を切り捨てる。
「立てるか?」
シュヴァーンがそう短く問うと、青年は再び腕に力を入れ立ち上がろうとした。
返事を聞くまでもなくそれが答えだった。
彼を抱えて移動するにはこの魔物の数は多すぎる。
状況を確認するため周りを見回すと隊員達が小隊長の指示のもとそこかしこで魔物と
の戦闘を開始しているのが見えた。
青年を助ける為とはいえ一人只中に飛び込んだので、隊員たちと距離が開いてしまっ
ていて、すぐに隊員たちと合流するというのは難しそうだった。
自分ひとりでどのくらいの時間持つか、それとも別の方法をとるべきか思考を巡らせた時、
「シュヴァーン隊長、ご無事ですか!」
「ルブランか」
自分の立っていない方角から青年に襲いかかろうとしていた魔物を切りつけて、踏み
越えるようにしてこちらにたどり着いた部下の姿を確認して、シュヴァーンはその名前
を呼んだ。
こちらの人数が増えて状況が変わったのをきっかけに巡らせていた思考を停止させて、
しゃがみ込んだままの青年の腕をつかんで引き上げる。
そのまま肩の上まで持ち上げて抱えると、比較的魔物の層が薄いところを狙って走る。
しかし、薄いと思われた魔物の層は自分を追ってくるかのように厚みを増して囲まれそ
うになる。
次々と襲い掛かってくる魔物を切り捨てていたほんの一瞬。
瞬きにも満たない一瞬。
自分の体勢がわずかに崩れるのを感じた。
いくら青年を置いていくわけにはいかないとはいえ、腕に抱えた重みは自分が思って
いる以上に身の動きを制限させているらしい。
それは仕方ないことではあったが、そのときは状況が悪かった。
自分と合流していたルブラン達が他の魔物から自分たちを守るために少し陣形を崩し
ていたのだ。
フォローに入るにはわずかに遠い。
その隙を逃さずに切り倒した魔物の向こうから更なる魔物が牙をむいて飛び掛ってき
ているのが見えた。
間に合わない。
せめて腕の中の青年だけでも遠ざけようと体をひねろうとした時、それは起きた。
4.
時間にしたら瞬きにも満たない時間だったのかもしれない。
ずっと大人しく抱えられていた青年が急に身じろぎ顔を上げたかと思うと、こちらに飛び掛
ってくる魔物を見つめ、ほんの一瞬つらそうに眉を寄せたのが見えた。
青年は力の抜けていた腕を顔の高さまで上げる。
そこまでを視界の隅で見ながらも、シュヴァーンは青年のやろうとしていることがわからな
かった。
理解できたとしても、彼がすることは変わらなかっただろうが。
腕を上げた青年の輪郭が焔色に光り、空気が震えた気がした。
感覚にして産毛がかすかに揺れるようなそんな微細な空気の変動。
しかし、目の前で起きた出来事は微細とは程遠い衝撃的な変動。
今にも襲いかかろうとした魔物が急に形を崩してバラバラの粒子となって宙へと散ったの
だ。
いや、襲いかかろうとしていたものだけではない。
自分達を閉じ込めるように囲みを作っていた他の魔物たちも目の前で消えた魔物同様に
ばらばらになって宙に解けてゆく。
目の前で一体何が起こったのかわからずに呆然としてしまった。
「ごめん」
目の前で起こった出来事を理解しようと、瞬きを繰り返していたシュヴァーンの耳にそれは
届いた。
視線を腕の中の青年に移すと、体を覆うようにしていた光が急激にひいてゆくのが見えた。
そして気を失ったのか、腕に掛かる重みが増す。
完全に意識を失ってしまった青年を抱えなおし、今の出来事で意識を散らしてしまっている
部下たちに叱咤の言葉をかけつつそれぞれに指示を飛ばして掃討作戦に戻らせる。
青年を助ける為に魔物の只中に飛び込んで行った自分のフォローをしていたとはいえ、自
分を囲んでいた魔物は青年の放った何かによって消えた今、ある程度安全になった隊長
のことよりも作戦を優先すべきだろう。
数は減ったとはいえまだ数がいるのだ作戦が終了するまでまだ気を抜くわけにはいかない。
とりあえずこの場は小隊長達に任せて腕の中にいる青年を安全な場所に移動させるのが
先決だろう。
全く、通常通りの任務だったはずなのに想定外の出来事ばかりが起こる。
ため息をつきたくなる心境になりながら、シュヴァーンは先ほどの出来事を思い返した。
囲いの薄いところを狙ったはずなのに、自分が行こうとしたとたんに魔物たちは反応した。
そして襲い掛かる時、自分ではなく青年を狙っていたような気がする。
囲いの真ん中にいるときは襲い掛かってくる魔物から青年を守ることに集中していたから
気付かなかったが、周りに意識を配れる状況になって先ほどのことを思い返すと、魔物は
自分に襲い掛かってくるのではなくただ執拗に青年を狙っていた気がする。
そういえば青年を見つけたのも魔物たちを追っていったからで――――――
・・・・・・まさか、魔物たちはこの青年を狙っていたのだろうか。
人魔戦争の原因ともなったヘルメス式魔導器を壊そうとしたときのように・・・・・
腕の中で意識を失っている青年の重さを感じながら浮かんだ考えにシュヴァーンは愕然と
した。
そんなわけない・・・・・あの時とは状況が違うではないか。
浮かんだ考えを即座に否定しながらもシュヴァーンは背筋を走る悪寒を振り払うことは出
来なかった。
青年の放った何かによって一気に減った魔物たちの掃討が終わるのも時間の問題だろう。
シュヴァーンはぐったりとしている青年を見下ろしてその顔色の悪さに眉をしかめながらも、
作戦終了後のことを考えていた。
青年が一体何をしたのかは分からないが、このことはアレクセイには報告しなければなら
ないだろう。
それによって彼がどのような立場になるか理解しながらも、自分はこの場で起こった事をど
のように報告するべきかただそれだけを考えていた。
5.
任務を終え帝都に連れ帰った青年は意識を取り戻しても、力を使った代償なのか起き上
がることさえも困難なほど消耗していて、結局アレクセイと青年を会わせることは出来な
かった。
仕方が無いので自分に与えられている部屋のベッドで休ませ、口頭で青年の体のこと出
会った状況、そして彼が放った力のことを逐一すべてを報告した。
青年の力に興味を示したアレクセイは青年の面倒をシュヴァーンに命じ、彼は断ることなく
それを受けた。
そして帝都に連れ帰ってから青年はずっとシュヴァーンの部屋にいる。
表向きには外を連れ歩けないほど脆弱な体だから。
裏向きの真実はその力を、存在を他の者に悟らせない為。
自分は彼にひどいことをしているのだろう。
自分がアレクセイに報告しなければ彼はここに留め置かれずにすんだ。
上手く動けないことを理由に城の一室に軟禁という状況に置かれずにすんだ。
なによりアレクセイの道具である自分と一緒にいなくてすんだ。
自分と一緒にいるということは、彼はアレクセイに道具であると認識された、アレクセイの
抱く野望の駒の一つとされたことを意味していた。
その事を思ったとき、贋物の心臓が痛んだ気がした。
「?どうしたんだ、急に眉をしかめて。お茶がはいるのが遅いのが気になるのか?」
急に眉をしかめたシュヴァーンに青年はいぶかしげに眉を寄せた。
聞いてきた内容は的外れであったが、考えていたことの内容が内容だったので、シュヴァ
ーンはそれと気付かれないように目を伏せた。
「・・・・・そんな事は気にしていない」
「じゃあどうしたんだよ。なんか顔色悪いぜ?」
「なんでもない」
いつもと違う様子からか心配そうに覗き込んでくる青年をややきつい口調で止めるが、そ
の瞬間に青年が浮かべた表情に気付き、言い訳するように言葉を続けた。
「・・・・・・・顔色が悪いのは根を詰めていたせいだろう。少し休めばすぐに良くなる」
「じゃあシュヴァーンがもっと休めるように、お茶が出来るのを出来るだけ遅くするな」
「それはやめろ。湯を入れた後での時間の変更は出来にかかわるぞ」
自分のついた嘘にうれしそうに笑う青年にまた胸が痛んだ気がしたが、それに気付かな
い振りをしてお茶の抽出時間を計っている砂時計をひっくり返そうとする青年を止める。
え〜、と不満そうな顔をして青年が、砂時計を懲りずにひっくり返そうとするのを、砂時計
を上から押さえつけることによって妨害している内に、砂時計の最後の砂が落ちきった。
「そろそろ時間なんじゃないか?」
「え?・・・・・・・あ、本当だ」
上手く力が入らない体で自分にかなうわけがないのに、砂時計を押さえつけている腕を
よけようと奮闘している青年に、自分でも気付かないうちに笑みを浮かべながら時間が
来たことを教えてやる。
すると不満いっぱいだった顔が一瞬にして嬉しそうな喜色に染まる。
シュヴァーンの腕をつかんでいた手を紅茶を蒸らしていたポットに伸ばし、茶漉しを片手に
手馴れた手つきで茶を入れていく。
茶が注がれたカップからは白い湯気が立ち上り、部屋には芳醇な香りが立ち込める。
「おまたせ。久しぶりに淹れたから上手く出来たか分かんねえけど、召し上がれ」
上手く持ててないのか微妙に震えているポットを、いつでもフォローに入れるようにじっと
見つめていたシュヴァーンは、照れくさそうに頬を染めて言う青年の言葉に、思いもかけ
ず集中していた意識が引き戻されるのを感じた。
そのせいか一瞬返事が遅れるが青年はそれに気付いた様子はなく、ただニコニコと笑い
ながらこちらを見てくるだけだった。
別に気付かれようが恥ずかしい事柄ではないはずなのだが、何故だかバツの悪い思い
を感じながらシュヴァーンは青年の淹れてくれた茶に手を伸ばした。
口に含むと紅茶独特の渋みとうまみを感じる。
毎回青年の淹れたお茶を飲むたびに思うのだが、この青年は紅茶を淹れるのが上手い。
いや、紅茶だけではない。こういう貴族階級が得意としそうな事柄が上手かったり高貴な
身の上の者がとるような洗礼された所作がしばしば見受けられたりする。
それが気になって貴族年鑑を調べたこともあったが、青年の名前を見つけることは出来
なかった。
青年の素性は未だ分かっていない。
そのことに落胆を感じている自分と安堵している自分がいる。
矛盾しているその気持ちに気付かない振りをして、シュヴァーンはさらに煽るように茶を
含んだ。
そして自分をじっと見つめる視線に気付く。
固唾を呑むように見つめてくるその視線が何を求めているのか分かったシュヴァーンは、
半分ほどに減った茶を口元から離すと苦笑するように眉尻を下げてふっと笑い、
「そんなにじっと見つめられているとどう反応すればいいのか困ってしまうな」
「うえ?!ああ・・・・ええとぉ・・・・・・」
からかう様にそう言うと、途端青年は慌てて睨み付けるように向けていた視線をあさって
の方向に向ける。よほど慌てたのかその口からは意味不明な言葉がもれ出ている。
「旨かったから安心しろ。おかげで疲れも少しは癒えた」
おそらく味の感想が聞きたくて見つめていたのだろう事は分かっていたので、必要以上
にからかう事はせずに世辞を含めずに素直な感想を述べた。
「なら良かったけどよ・・・・・・・・てか、俺の言いたいことが分かってたんなら、最初から
そう言ってくれればよかったじゃねえか。変な誤解されたと思って焦っただろうが」
頬をふくらませて拗ねたように眉を寄せて文句を言ってくる青年に子犬に対するような愛
くるしさを感じて、無意識の内に口の端が上がる。
「聞きたいことがあるのなら口で言え。その為に口がついているのだから」
聞かれたとしても正直に答えるかどうかは別問題だが。
そんなことを心の内で続けながら、拗ねてしまった青年の機嫌をどう直そうか思案の為に
青年の顔を見つめて、その顔色が悪いのに気付いた。
短い距離ですら満足に動くことが出来ない体なのにあんなに騒ぐからだ。
半分は自分が原因だとは言え、体調の悪さを言ってこない青年にシュヴァーンはぎゅっと
眉を寄せた。
「顔色が悪いぞ」
「え?」
「私が執務をしている間ちゃんと寝ていたのか?」
「ええっと・・・・・・」
シュヴァーンの問いに青年は気まずそうに視線を逸らした。
それが答えだった。
シュヴァーンは手に持ったカップをサイドテーブルに置くと、無言で青年を抱き上げた。
「えっ!シュ、シュヴァーン。ちゃんと寝たから、言われたとおりに熟睡してたから」
「嘘だな」
「間髪入れずに断言することないだろ!」
「顔を見れば分かる」
拗ねたようにぷーっと頬をふくらませる青年にため息をつきつつ、シュヴァーンは青年のベ
ッドがある部屋の扉を開ける。
青年の存在は極秘事項に当たるので、彼が静養――という名の軟禁――している部屋は
シュヴァーンの職務室兼自室とつながっている隣の部屋だった。
昼間だったら日が差し込んで居心地の良さそうな部屋ではあったが、残念ながら今は夜な
ので空に浮かぶ結界魔導器<シルトブラスティア>の淡い光が差し込んでぼんやりと部屋
の輪郭を浮かび上がらせているだけだった。
窓のすぐ近くに置かれたベッドに青年を横たえて掛け布団を引き上げてやると、軽く袖を引
かれた。
「なんだ?私の事は気にせずさっさと眠れ」
引かれた袖に導かれるようにシュヴァーンは青年の顔を覗き込んだ。
目があったと思った瞬間青年は嬉しそうに笑った。
「ありがとう。シュヴァーンはやさしいな」
信頼がいっぱいに詰まった視線を受け止めて、シュヴァーンは何も返せなかった。
自分はやさしくなどない。
真にやさしいものはいつか青年を害するかもしれない場所に青年を留めたりはしないだろう。
真にやさしいのなら優しくなどせず強く突き放すだろう―――――いつか青年を裏切る日が
来ると分かっているのだから。
味方であるより敵であった方が青年の心を傷つけることはない。
だから自分はやさしくなどはないのだ。
無言でシュヴァーンは青年の頭を撫でた。
湧き上がってくる言いようのない苦しさを伴う感情を否定する。
自分は死人でアレクセイの道具なのだから。
生者が抱くような感情など感じることはない。
だから青年の言葉に胸の奥底が痛んだ気がしたのもまた気のせいなのだろう。
何も答えないシュヴァーンに不審を抱いた様子もなく幸せそうに微笑みながら青年
が深い眠りの底へと下りていくのをほの暗い光を宿した瞳が見つめていた。
拍手お礼として展示していた作品です。
レイルクに滾って、転げ回っていたらシュヴァルクおいしいじゃないかと思考が変な方向に半回転した結果、
自給自足のために書いた作品でした。
周りを見回しても誰一人として書いている人がいないという、ドマイナー街道へと足を踏み入れてしまった為に
そうするしか自分の萌が消化できなかったんですよ・・・・・・。
需要があるかも分からないままに拍手のお礼としてこっそりあげたんですが、思った以上に反応がいただけて
やった、シュヴァルクに萌えたのは私一人じゃない!
と、よく分からない歓喜に奮えてました(笑
続きが読みたいという方がいらっしゃったので、拍手の方でちまちま連載していこうかと思ってます。
今はこの出会い編のルーク視点を連載してますので、興味があったらのぞいて見て下さいませv
この下は言い訳といいましょうかシュヴァルク語りと申しましょうか、色々語ってます。
しゃあねえ読んでやるよという方のみお進みください。
えー興味ない という方はこちらからお戻りくださいませ→ Back
シュヴァルクを成立させようとした場合、シュヴァーンとしての彼と出会い、その後も一緒にい
られるような状況ではないと成立しないかなぁと思い、こんな感じの出会い編になりました。
シュヴァーンってあんまり人前には出てこない隊長だって認識があるので、こうでもしないと
接点が無いんじゃねと考えたわけです
シュヴァルクと書いていながらシュヴァルクっぽく無い話ですみません(汗)
出会ったばかりの頃はこんな感じじゃないかと勝手に思ってます。
シュヴァーンは根が優しい人なんだろうと思います。
面倒見がいいというか。
表面だけの人にルブランとかが心酔するわけないと思いますし。
ルークに対して罪悪感を感じているけど自分は死人でアレクセイの道具だから感情なんてな
いと見てみぬ振りをして気付かない振りをすると。
頭の良い人だけど自分は死んだ人間で生きているのがおかしいという認識はそうそう抜けな
くてそのせいで二人はすれ違ったりぶつかったりと・・・・・・・・考えるだけで色々楽しめます(爆)
ルークの体が虚弱になっているのはシュヴァーンに面倒見させるためだったりしますが一応
ちゃんとした設定がありまして、ローレライ解放の影響でルークの体を構成するフォニムが極端
に少なくなっているんだけれどテルカ・リュミレースにはフォニムが存在しないから少ないフォニ
ムでも乖離しないと(確かフォニム同士で引き合う特性があるとかジェイドが言っていたような気
がしたので)、だけど少ないが故に動いたりするのに色々支障が出てしまうというわけです
本編で一緒に動き回らせるには色々下準備が必要ですが、その辺の設定の肉付けはある程度考えてます。
最終的にはハッピーな感じにしたいですが、基本的にシュヴァルクはルーク→シュヴァーンのスタンス
なのでアンハッピーなにおいがして来そうな気がします。
実際はルーク→←シュヴァーンな感じになっていくわけですが、シュヴァーンの方にそれを受け入れる
だけの心理的余裕が出来ないとシュヴァ×ルクとはならないんですよね・・・・・。
好きだけど好きと気付けないとか、好物過ぎて妄想だけで萌え転げられる自信があります(何の主張だ)
最後にはシュヴァーンはレイヴンとして生きていく事になるわけですけど、ルークと二人のときはどこ
かシュヴァーンな面がでてしまうと嬉しいですよね。
無自覚にやっててジュディスとかに指摘されてわたわたしてるおっさんとか激しく萌えます。
これに同意できる人は何人いるんだろうか・・・・・・
色々語りまくってすみません。
こんな所まで読んで下さってありがとうございました!!
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